〈第2部〉「萬燈照国」特別対談『長寿企業の知恵は財産』
この対談企画では、智慧の燈火プロジェクトにご賛同いただき、現在もプロジェクトの展開、発展にご尽力いただいている長寿企業の代表の方々、関係者の方々をお招きし、「未来へ繋ぐ、地方創生の新しい形」をテーマに忌憚のないご意見をいただいています。
今回はNSGグループ代表 池田弘氏と株式会社チエノワ 代表取締役 田中雅也が、地方創生のあり方と、プロジェクトの未来について、語り尽くしましたので、その模様を3回に分けてご紹介します。
〈第1部〉挑戦という試行錯誤の先に、人生を生き切る軸を見出していく
〈第2部〉時を超え、世界遺産を発掘する「智慧の燈火プロジェクト 」に共感した瞬間とは※本記事
〈第3部〉地方創生には「よそ者・馬鹿者・若者そして旦那」が必要不可欠
〈第2部〉時を超え、世界遺産を発掘する「智慧の燈火プロジェクト 」に共感した瞬間とは
イノベーションで長寿企業を再生
田中:これまで、多くの若手経営者の応援・支援・サポートを行っている池田さんですが、創業100年を超える長寿企業の再生も担われており、その出会いは何がきっかけだったのですか?
池田:「地方創生、日本活性化」には田中さんみたいな若い力や原動力が必要だと思っているからこそ、2001年に異業種交流会501を立ち上げ、ベンチャー企業・若手社長の育成を継続的に行ってきた。同時に、企業再生にも関わる中で、100年以上の歴史を誇る長寿企業が4社あった。時代の大きな変化、社会の変化に対応できない企業は継続できない。新たなイノベーションを続けていく中で、4社の長寿企業を再生することができたんですね。
長寿企業の知恵は日本の財産
池田:創業家から経営を引き継ぐ中で、長い歴史を繋いだ先人たちの存在、受け継がれてきた想い、この会社にしかない唯一無二の物語に触れることができたんですね。日本の財産とも言える長寿企業を無くしてはいけないという想いと同時に、継続しているからには「まだ発掘されていない事業継続の知恵(秘訣)が埋まっているのでは?」と感じ、長寿企業に対する関心はより強くなってきました。
田中:長寿企業の関心が高まる中で、「智慧の燈火プロジェクト」の構想を、池田さんへ最初にお話した時のことは覚えていますか?
池田:日本ニュービジネス協議会連合会の会長として全国を巡っていると、地方の中核企業は長寿企業が多い。その歴史的な背景を聞き、地方を支えてきているのは長寿企業の皆さんであり、地方創生を行うためには長寿企業の知恵や協力が必要だと感じていました。もう一つ、世界一100年を超える企業の多い日本にとって、長寿企業は日本の財産であり、その知恵を創生していくことは日本から世界へ提供できるノウハウだと確信していました。
だからこそ、田中さんから「智慧の燈火プロジェクト」の話を聞いて、日本に貢献できる事業であり、社会的意義として素晴らしい事業だと痛感した。ただ、当時は収益モデルが固まっておらず、正直事業継続できるか否か半信半疑だった。まさか、こんな短い間にここまで事業として成長、発展するとは思わなかったな(笑)
智慧の燈火プロジェクトのこれまで
田中:2013年に会社設立時より、自分自身の未熟さや甘さが原因で様々な困難を経験してきました。でも、その困難があったからこそ、僕自身の使命を見つけることができ『チエノワの社名は、おもちゃの知恵の輪には必ず一つの解があるように、事業の成功・失敗にも必ず一つの解があります。その「解=知恵」を発掘し、その知恵を輪のように他の企業へと伝えていきたいという想いで創り、更に創業時から掲げてきた”ものがたり創造カンパニー”として長寿企業こそが誰よりもものがたりを繋いてこられているからこそ、その長寿企業の知恵を未来へと繋ぐことに全てを捧げよう!』と、その使命を貫いていく覚悟を定めてくれました。
とはいえ、2017年の立ち上げ時は既存事業の80%を縮小し、裸一貫での船出となりました。その中で、東京海上日動火災保険さんがビジョンや想いに共感し、ご支援下さり、本当に感謝の気持ちで一杯です。その後、『智慧の燈火プロジェクトを立上げ、残りの人生全て捧げます!東京海上日動火災保険さんにもご支援頂けることが決まりました!』と池田さんにお伝えすると、覚えていないかもしれないですけれど、開口一番『お前は凄いな、詐欺師だな!』って、頂きました(笑)
池田:…(笑)。形がないのに広告を取る、ということは失敗すれば詐欺師になる。「詐欺師じゃない」と証明し信用を得る為には、最大限の努力が必要であり、その積み重ねが重要だと伝えたかったのと同時に、まだ全体が見えてないものに関して、大企業にプレゼンができるのはすごい能力であるという意味で「詐欺師」という言葉を使ったんだ(笑)。
事業と覚悟
池田:私自身、新潟県サッカー協会は全国一会員が少ない土地柄であり、新潟の政財界の皆さんにサッカーチームを作りたい旨を伝えた時、『大都市で失敗しているのに出来るはずがない!」とも言われた。それでも、『やる!サッカーが盛んになれば、新潟で世界一のスポーツイベント “ワールドカップ”を開催することができる!』と言い続け、出資して頂いた。確信というより、やり切るしかないと覚悟していたけど、それこそ、失敗したら完全な詐欺師でしたよ(笑)。
そのときの私自身のように、田中さんの目には「掲げたビジョンを詐欺にしないようにやり切るに違いない」と、熱い想い、そして覚悟を感じた。ただ、何も実績がない中での長寿企業へのアクション、どのように出会いとご縁を繋いでいったのかな?30歳弱のベンチャー企業の社長が「会いたい」と言っても、そう簡単に時間を作ってもらえると思えないけど…(笑)
田中:長寿企業への最初のアクションは全て電話でさせて頂きました。やはり信用の無い、付き合いの無い会社からの電話でもあり、また商品・サービスが何一つ出来上がっていない中では、お会いするキッカケを頂戴することが正直難しかったです。商品が出来てないのに営業しているようなものですからね。撮影費などを頂いてはいませんでしたが、普通なら電話でのアクションの時点でアウトですよね(笑)その中で、本プロジェクトに興味を持ってくださる企業が一つ、また一つと生まれてきまして、『自分自身の残りの人生賭けて、世界遺産である長寿企業の知恵を遺していきます!』と本プロジェクトに掛ける想いは勿論、志、使命感を伝える中で、本プロジェクトに惚れて貰いましたね。まさにナンパ師ですね、口説くという点では(笑)
田中:ただ、発足時から決めていた「想いを共にできる人とのみ、ご一緒する」。その一点はブレずに貫いてきました。既存事業を大幅に縮小し、退路を断って歩み出した道で、本当に何も決まっていなくて…東京海上日動火災保険さんにオフィシャルパートナーになって頂いた際には、「東京海上日動火災保険さんにとっての価値を最大限に生み出せるように!」と、全てを賭けてきました。番組「Story~長寿企業の知恵~」で初めてご縁頂いたAGC旭硝子(現、AGC)さんにも110周年企画という国内2万人・国外3万人の全グループに向けた社内企画のお仕事を頂き、雑誌「一燈照隅」では2018年に100周年を迎えたパナソニックさんにもご支援を頂戴し、本当に一つひとつのご縁に感謝しかないです!
人との出会いは偶然ではなく必然ということ、そしてご縁が繋がり、全国へと智慧の燈火プロジェクトの燈火が一つひとつ灯ってきていることを改めて実感しています。
智慧の燈火プロジェクトと池田氏の出会い
池田:その燈火の火が私に燃え移ったのは、2017年12月、コメンテーターを務めさせてもらった「新潟フォーラム」。夜120分と長い時間のイベントにも関わらず、150人を超える参加者(地元の経営者)が誰一人寝ずに長寿企業の声に耳を傾けている姿を見た時だった。正直、コーヒーにカフェインがいっぱい入っていたのではないのかと心配したよ(笑)。
トピックとして正面から長寿企業を取り上げたことは私にとって初めてだったし、また、大事なテーマだと改めて感じた。長寿企業が自らについて語ることに関して「100年、200年経ったからといって自慢こくな!」と日本人は感じますね。特に地方都市行くと「何を威張っているのだ」みたいな話になりそうなのだけど、それを「威張っている」で終わらせてしまうと、やはりなぜなのかということに関して知見が分析されない。
それがフォーラムを通して、すごい苦労があると、登壇された方々は明確に話されていました。その知恵をお互いに学び合うことは物凄く大事であり、ノウハウや知見は世界共通である。まさに、数少ない日本が輸出できるソフトである。このプロジェクトが全国各地の宝であり、日本の宝である長寿企業の知恵を発掘し、その知恵を地域の未来を担う経営者に伝承し、地方創生の一助になる。そして、日本のみならず、世界へと発信すべき教育事業となり得ると確信した瞬間でしたね。
智慧の燈火プロジェクトと地域
田中:でも、池田さんは「若い経営者を応援したい」という思いが強いイメージだったので、イベント参加から、ここまで短期間にプロジェクトに賛同してもらえるとは正直思っていませんでしたよ(笑)
池田:ベンチャー企業はITやAI等の新しい技術・システムが多いが、長寿企業は人間にとってベースとなる衣・食・住や教育等の必要不可欠な産業が多い。つまり、存続し続けているという事実は、その地域や人間にとって必要とされていること。
それが時代や環境、そして人間の趣向の変化にイノベーション(技術革新)できていない長寿企業は苦労し、変化に対応できてない。それをほんの少し変えるだけでイノベーションを起こせる。ゼロから立ち上げるより、「経営者のマインドを変えれば、今あるものも物凄い大きな変化の可能性がある」ということ。クールジャパンとか、和食が国際認定されたように、日本の持っている奥深い文化に裏付けされたものは、グローバルに成長できる高い可能性を持っている。
だからこそ、本プロジェクトも地域・地方と共に継続的に開催し、都度新たなアイディアからイノベーションしながら続けていって欲しい。私自身、地方創生という名目で「イベントで街興し」という一過性で終わるものや取り組みは、発信力が少なからずあるとは思うけれど長続きしないし好まない。やはり、継続的な活動、続けていくことに価値があると思っていますので。
田中:まさに同じ想いで、一発花火を打ち上げて終わるような企画、継続的な視点で捉えていない企画には全く興味がないですね。僕自身が石川県金沢市出身の地方出身者だからこそ理解できることですが、地方で東京から持ち込まれたイベントが開催されても、〝よそ者〟という認識を拭い去ることができません。
だからこそ「地方創生経営者フォーラム・伝燈と志命」では、地域の方々に参画して頂き、主体として継続的に開催していく中で〝自分事〟となり、根付いていくことが必要不可欠だと考え、全国各地で開催する際には、地域を支える皆様、地銀、県や市といった地方自治体、商工会議所、経済同友会、法人会などの経済団体、新聞社、テレビ局等のコネクターハブ企業に後援や協力を頂くことを必須にしました。
立上げまでに時間は要するものの、想いを共有していくことが大切ですし、地域での開催が2回目以降になると、地域の皆様が登壇者の皆様の調整や企画のアイディア出しなどを含め主体的に動いて下さることが本当に有難い限りです。
次回は第3部、「地方創生には『よそ者・馬鹿者・若者そして旦那』が必要不可欠」をみていきます。
〈第1部〉挑戦という試行錯誤の先に、人生を生き切る軸を見出していく
〈第2部〉時を超え、世界遺産を発掘する「智慧の燈火プロジェクト 」に共感した瞬間とは※本記事
〈第3部〉地方創生には「よそ者・馬鹿者・若者そして旦那」が必要不可欠