諏訪貿易 株式会社〜宝石は 受け継ぐ人に喜ばれるものであってほしい

諏訪貿易 株式会社
1908年 (明治41年)創業
今回のゲストは諏訪貿易(すわぼうえき)株式会社 3代目・諏訪恭一。
初代・諏訪喜之松が兄の家で宝石に出会い、その美しさに魅せられ、一人で宝石の扱いを始めたのが1908年。
以来高品質の宝石とジュエリーに特化した商品を取り扱い、諏訪クラシックとして宝石の美しさを引き出した指輪・ペンダント等を日本と米国の専門店・百貨店、約50店舗でコーナー展開している。
今回は、そんな諏訪貿易の3代目・諏訪恭一の言葉から事業継続の秘訣、その裏に隠された物語に迫る!
石田:今回のゲストは、諏訪貿易株式会社 会長 諏訪恭一(すわ やすかず)様です。
よろしくお願い致します。
諏訪:こちらこそ。
朝岡:よろしくお願い致します。
事業の内容ですが、諏訪貿易というのは、外国から輸入なさる…輸入なさるだけではないんですよね?
諏訪:はい。ええ。現在はですね、宝石を海外から調達をして、それを日本で仕立てをして、日本の得意先とアメリカの得意先、約50件に販売をしている。そういう仕事をしています。
朝岡:あぁー!これは、あれですか、ねぇ、何代目の社長になりますか?
諏訪:私、3代目なんですけど、今は、社長は4代目。それも生え抜きの社員から選んだ者が10年しています。
朝岡:わぁ!
石田:そして、本日こちらに、諏訪貿易さんの商品の一部をお持ち頂きました。
諏訪:はい。石田さんに、これ見て頂きたいんですけど。このダイヤモンドなんですけど。(ダイヤモンドの指輪を差し出す)
石田:わぁ!キラキラ!
朝岡:中継ぎで(笑)
石田:こちらは、ダイヤモンドですか?うぉっ!あの、、、触るのも恐れ多い感じがするんですけれども(笑)
諏訪:いえいえ、そんなに、それ高いものじゃないんで、この、私ども「エアー」と言ってるんですけど、エアーのシリーズは、すごい輝くとお客様から好評を頂いているんですけど、その秘密はですね、階段状に留めてあると。それ留めるのが非常に難しくてですね、私どものそれは、看板商品になっております。
石田:へぇー!!
諏訪:こちらは、ペアシェーブ。梨。つゆ型ですね。つゆ型のペンダントなんですけど。(ペンダントを差し出す)
朝岡:涙の様な!どうですかちょっと。(石田さんに渡す)
石田:あぁー!可愛いらしい!ありがとうございます。
朝岡:あっらー!
諏訪:あの、ラウンドよりもドロップ型の方が、エレガントなんですよね。
石田:えぇー(笑)ちょっとこうね、合わせてみたくなるんですけど。
諏訪:それが、あの、ジュエリーの良さだと思うんですけどね。
石田:あぁぁぁぁー!
朝岡:お洋服だけじゃなくてね、身につけてる女性のね、その内面も!
石田:もうちょっとね、グレードアップするように!
朝岡:単に宝石、良いものも勿論ですけども、どう見せるかってところに、諏訪貿易さんのね、やっぱりこうエネルギーがね、注がれてる気が致します。
諏訪:宝石というのは大自然が生み出したもので、人の手で人が作ったものではないんですよね。それをどういう風に仕立てるか。構想と仕立てが大事なんです。
映画もそうなんです。映画も、いくら良いスタッフが居ても、監督のそのプロデュース力によって面白いものになるかどうか決まりますよね。だから、こういったものっていうのは、本当に名画に匹敵するようなそういったジュエリーだと思います。それが私どもの一番大事にしてるところです。
朝岡:なんかね、もうその会長とかっていう役職を抜きにして、もう宝石大好きで仕方ないっていう雰囲気でいらっしゃるんですけど。
諏訪:はい、ありがとうございます。
石田:伝わってきますよね。
朝岡:はいはい。
石田:そして、こちらの本は会長がお書きになったんですか?
諏訪:はい。1993年にこれ、最初に出版したものなんですけど、その前の年に家庭画報に1年間「ジュエリー12ヶ月」という連載をして、それをもとにこれを作ったんですけど。このきっかけがですね、私の父親から「良いものを扱え」とこう言われてて、社員にもそれは徹底してたんですけど、ある時、「社長はいつも良いものを扱えと言われるけども、一般の方が良いか悪いか分からなかったらしょうがないじゃないですか。」って、そういうことを言われて、で、それは、ショックであると同時に、そしたらきちんと宝石の品質が分かるそういった本を書き上げようというそういう気持ち、強くはたらいて。宝石の買付というのは、現地に行きますと、光線の具合が違うし、それから、朝と昼と夕でも違いますし、夜だったら特にこういうもうサンプルがないとなかなか濃さとか美しさと判断できなくなるんで、判断材料にこれ、私のマスターストーン。付け石と言ってこういったものを使ってた。
で、これがもとで、こういったそれ(マスターストーン)を発展させて、濃いのから淡いの。美しいものからそうじゃないもの。この35マスに入れるこういうスケールを作って、これをもとに、この本を書いたんですね。好評だったんで、2が出来て、3が出来て、、、それから、ある出版社から、「宝石図鑑を作るけども、その監修をしてくれないか」って言われたんですけども、監修ですと、誰かが書いてきたものを直さなくちゃなんないんで、かえって大変なんで、いや、自分で書くよってことでこれ(宝石図鑑)を書いたんですけど。こちらの本は、すごく…
朝岡:これ?!(本を手に取る)
諏訪:えぇ、今Amazonで…
朝岡:「価値がわかる宝石図鑑」!
石田:ねぇー!
朝岡:これ、すごいですよ!Amazonの金属・鉱学売れ筋ランキング第1位!
石田:へぇー!
朝岡:これ、中はまぁ勿論図鑑だから、こういう鮮やかなんだけど(中身を見せて)、その具体的にね、このどういうものが良いんだとか、細かい内容だとかそういうのすごくお勉強になる。
諏訪:これはね、宝石を光度順に。ダイヤモンドが光度、モース光度10なんですけど、ルビー・サファイアが9なんですよね。で、光度順に並べたんで非常に分かりやすい。それで、宝石というのは光度が7ないと、長くはめてたら、やっぱりこう擦れてしまったり欠けやすくなるんですね。そういうこともあって、光度順に並べるのは非常に大事だったんです。
そのことと、あと、そこ(宝石図鑑)に色のありますでしょ?
朝岡:これね!(宝石図鑑を開く)
諏訪:それが、GAI アメリカ宝石学会が作ったようで、それは1つの鉱物にどういう色があるかっていうのを示してる、そういう表なんですね。色の範囲のなんですね。
それともうひとつ、良し悪しで値段がどのくらいかっていうそういう内容が盛られてるので、皆さん便利に使って頂いてるんじゃないかなと思って。
石田:大好評っていうことですけど…ちなみにどれくらい販売されたんですか?
諏訪:今、5刷りになりましてね!
石田:えぇ……
朝岡:5刷り?!
諏訪:2万冊ぐらいです。
朝岡:2万冊出た!!!いや、確かにね、宝石買う時に、良いものは欲しいけど、その判断基準が我々持ってないから。
石田:分からないですもん。
朝岡:言われた通りにね、買うしかないっていう現実があったんですけど
石田:確かに。
朝岡:これで勉強すると、自分の価値が分かるっていうかね、宝石の。
ナレーション
ここからは、各テーマを基に
諏訪貿易3代目・諏訪恭一の言葉から、歴史と伝統の裏に隠された物語・諏訪貿易が持つ長寿の知恵に迫る…。最初のテーマは「創業の精神」。創業者の想いをヒモ解き、現在に至るまでの経緯を、諏訪貿易3代目・諏訪恭一が語る…!
石田:創業の精神ということで、まずは、創業から現在に至るまでの経緯を伺えますか?
諏訪:私の祖父の喜之松が、1908年 明治41年に創業致しました。祖父は、千葉県の上総一ノ宮というところの出身で、まだ小学校5年ですか、木更津から船で東京に出て来て、カミヤに奉公して、それから、ジュエリーの飾職人になって、それをもとにですね、自分で商売をやると。創業したと聞いております。
朝岡:ほぉー!で、2代目がお父様で?
諏訪:はいはい。2代目ですね、戦争の時に、一時中断。贅沢品は扱えなかったので。戦後ですね、父が再開して、その時にはまぁあの…闇の時代ですよね。何から何まで。そういった時に、良いものを扱うことにして、それで良いもので非常に盛況だったというふうに聞いております。
朝岡:そうですか。そもそもそのおじいさまが宝石を扱われるようになったきっかけっていうのは、どういうところにあったんですか?
諏訪:やはり、あの…ハイカラだったんですね、おじいさん。で、兄弟がアメリカに渡ったりしてましたんで、そういったことが影響されたんじゃないかなと思いますね。
朝岡:明治の末年でね!
石田:ねぇ!アメリカに渡ってらっしゃるってすごいですね。
朝岡:諏訪貿易さんのそういう意味では、その家訓とかですね、理念といったものは、代々あったりするんですか?
諏訪:私の父がですね、「良いものを扱う」と。それを商売の基本にしておったと思います。まぁ家訓とは言わなかったですけど、私に、宝石っていうのは分かり難いもんなんだから、良いものをお客様に、プロは良いもの分かりますから。良いものをお客様に。高くてもそれを販売しとけば、お客様は身につけて、やがて分かって喜んで、そして、それが長く使って楽しんで、次の世代になった時にも価値を持ち続けて、受け継がれていくと。だから良いものを扱いなさいと。
それで、一番印象に残ったことの一つは、それに関してですね、例えば宝石の脇のところに傷があったりして、それを爪で隠したりしちゃいけないと。それは、素人の人は分からないじゃないですか。そういったことをしちゃいけないと。正直にやりなさいと言われてました。それがもう家訓っていうか、この商売、宝石商を営む上での一番大切なことだと。
ティファニーさんと私ども、OEMのお取引を10年程、1994年からしてまして、その時、最初にティファニーさんに言われたのは、ティファニーは、傷を爪で隠すようなことはしないんだと。それはやらないでくれって言われたのが、非常に私印象に残って、あぁ、やっぱり良い会社だなと。一生懸命やろうと。随分お取引頂いたんですけど、10年間随分ティファニーさんと深いお取引をしてですね、今、環流品が時々、私どもの作ったものが戻って来るのを、それを見るのが非常に楽しみにしてます。
朝岡:そうですか。
石田:やっぱり高価なものを買う時って、やっぱりその方が信頼できる人から買いたいって気持ちがありますから、その誠実なところが皆様に伝わっているんでしょうね。
諏訪:宝石はね、ハ何を買うかじゃなくて誰から買うかが大事だっていうそういう諺があるんですよね。だから、それは分からないものだから、誰から買うかが大事だと。そういうことを守っております。
石田:御社では、人材育成にも力を入れてらっしゃるそうですね?
諏訪:はい。私ども、先程お話ししたように、新卒採用なんで、もう2年経つと海外に一人で出すことにして、まぁ今の役員みんなもう100回200回海外に出向いてですね、それで仕入れをして、任されて、自分で決めて買い付けてくるわけですから、それが一番の、私どもの今、財産なのかなというふうに思いますね。
朝岡:今、社員はだいたい何人くらいいらっしゃるんですか?
諏訪:今、パートさんを入れて20人です。
朝岡:何百人何千人と社員がいるというよりは、同じ志を持った人間が家族的にこう集まってるという。そういうふうでもあるという。
諏訪:はいはい。
石田:会長から、その会社の社風というものを、どういったものだとお感じになっていますか?
諏訪:無理をしない。腹八分目でやるっていうそういうところだと思いますね。
例えば、売る時にも、高く売れると言ってそのフルで売っちゃいけないと。その私あのもうひとつ別のダイヤモンドの方もデビアスの役員の方と書いたんですけども、そのデビアスの役員の方が、We sell diamond with regretって言うんですね。っていうのは、後悔して売る。十分高くじゃなくて
朝岡:もうちょっと高く売れば良かったかな−!っていう。こういう感じですか?
諏訪:そうなんです。それはもう、それが良いんだと。売るのも八分目。
だから逆に、その買う時には一番高く買う。というのは、勿論目利きをしてここまででっていうことは、それは何か高く買ったら全くの愚か者ですけども、きちんと目利きをして一番高く買う。それじゃなきゃ良いものが入らない。良いものが集まらない。なぜならば、宝石っていうは限られたものですから、世の中に1こしか良いもの、それしかないわけですから、それはやっぱり一番高く買ってくれる人が扱うことになるし、その方のところに行くわけですから、そういったものっていうのは、ぐーっと長期的には値上がりしてきますよね。
ですから、そのsell with regret.と、それから買う時には一番高く買う。というそれが宝石の他のものと違いますよね。出来るだけ安くというのと、そのところが。そういうことがきちんと分かるような集団になってると。それはもう大勢になったら、なかなか出来ないと思いますね