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カンロ 株式会社「つくる、おもう、つなぐ」

オープニング・創業の精神 ~家訓や理念誕生の経緯~

今回のゲストは、カンロ株式会社代表取締役社長 三須和泰。カンロ株式会社は大正元年に山口県光市で宮本製菓所として創業し、100年の時を越えてキャンディーを中心とした食品菓子の製造を行ってきた。日本人にあった飴をつくりたいとの想いから生まれたカンロ飴は、現在の社名にも使われるなど、まさに国民的キャンディーとして発売当時から多くの人に親しまれている。さらに業界初の健康のど飴など、キャンディーのパイオニアとして、業界を牽引し続けているのだ。一粒のキャンディーで人と人を繋いでいく存在として、カンロの商品が物性的な価値をこえ、家族や友達、人と人とのコミュニケーションを円滑にすることの願いを込めて、日々製造に取り組んでいる。この言葉に隠された想いを、現在カンロ株式会社の代表を務める三須和泰の言葉から、先代たちが紡ぎ、伝承してきた理念やものづくりへのこだわりと共に、その裏に隠された物語に迫る。

石田:本日のゲストは、カンロ株式会社代表取締役社長、三須和泰さんです。よろしくお願い致します。

朝岡:もうカンロといえばカンロ飴。私の子供時代のおやつって大体おばあちゃんがカンロ飴出してくれたんですが。事業内容ってカンロ飴以外にもいろんなものを扱っていらっしゃるわけですよね?

三須:カンロ飴を中心とした飴やグミ、キャンディーが中心なんですけども、それ意外に素材菓子と呼ばれているスナックのような商品もございます。ただほとんどキャンディーが9割くらいの売上を占めているという意味ではキャンディーの製造メーカーということになります。

朝岡:昔はカンロ飴のカンロってカタカナでしたが、今は横文字になっちゃってる。

三須:実は昔からローマ字のパッケージを使っていたんですよ。61年前から。あまり変わってないんです。

ここでカンロ株式会社の代表的な商品を紹介。日本人ならではの味を追求し、大ヒットの末社名にもなり、今なお多くの人に愛されているカンロ飴。菓子食品業界初ののど飴、健康のど飴。無香料無着色で素材そのものの美味しさの表現に成功した金のミルク。そして大人の女性向けグミとしてカンロが新たな市場を切り開くきっかけとなったピュレグミ。さらに素材菓子と言われる海藻や梅などの素材をお菓子として味わっていただくシリーズでは、同じく創業百年以上を誇る山本海苔店と共同開発した、海苔と紀州梅のはさみ焼きなど、キャンディーの枠を越えた商品も数多く生み出しているのだ

三須:ここに入っていますのは、ヒトツブカンロと言いまして、私達の直営店が東京駅のグランスタに一店と、大阪駅のルクワイーデというところに一店あるんですが、そこで販売しているのが箱や缶に入っている特別な商品でございます。

創業百周年を記念してつくられたカンロの直営店、ヒトツブカンロ。店名はコーポレートメッセージの一粒のメッセージからインスピレーションをうけ名付けられた。通常の流通商品ではない、直営店限定の商品を扱っており、キャンディーの魅力をより一層楽しむことができる。グミッツェル、ピュレショコラティエなど、味や品質にこだわることはもちろん、キャンディーの価値を高める魅力的な商品を展開している

朝岡:カンロ飴のカンロって言葉の由来を改めてお伺いしたいのですが。

三須:中国古来の伝承で、天から降る液体をカンロと言っていたという説もありますし、インドの方から来たという説もあります。色んな説がありますが、天から降る甘い液体がカンロという言葉になっているそうで。

創業者の宮本マサイチさんという方が、なにか日本人ならではの日本人にあった味の飴を開発したいという事で、お砂糖と水飴にお醤油を入れる。このお醤油が隠し味になっております。それがカンロ飴なんですけれども。それが非常に美味しかったのでカンロという名前をもってきたという風に聞いております。

カンロ飴は昭和30年。カンロ自身は大正元年創業なんですけども、その頃は宮本製菓所という名前の会社で。昭和30年にカンロ飴が発売されて、その後会社の名前もカンロに変えたという経緯です。

ここからは三須和泰歴史と伝統の裏に隠された物語、カンロが誇る長寿の知恵に迫る。まず最初のテーマは「創業の精神」創業者の想いを紐解き、現在に至るまでの経緯、社是や使命が誕生した背景を三須和泰が語る。

三須:ものづくりの原点として、創意と工夫ということをベースにいたしまして、「つくる、おもう、つなぐ」ということにしています。創意工夫という考え方はカンロ飴の開発が原点になっていまして、これまでにない醤油をベースとした飴に創意が入っていると。

それから醤油を飴につかう時に、創業者の宮本マサイチが大変苦労しまして、お醤油が焦げてしまうんですね。非常に高熱がかかるので。何度も失敗しながら工夫を重ねてカンロ飴の原型が出来上がったということで。その工夫がメーカーにとって非常に大切な考えの基本だということであります。

またコーポレートメッセージとして、「一粒のメッセージ」というのを掲げています。飴一粒で人と人を繋いでいくという想いを、会話のきっかけにしてもらうとか、人と人を繋げていくとか、そういうものになっていくのではないかということで。我が社自身が人と人を繋げていくような会社になりたいという想いを込めています。

朝岡:社是やコーポレートメッセージというのがだいぶ昔から会社にあったのか、それとも最近まとめたものなんですか?

三須:創意と工夫というのは昔からありました。ただ「つくる、おもう、つなぐ」とか「一粒のメッセージ」とかは私どもがCIを行ったときに改めてつくったものなので、そんな昔のものではありません。

朝岡:具体的にわかりやすく浸透しやすく社是を他の言葉に買えるというのは大事な作業なのかもしれませんね。

三須:社員にこれを浸透させるときに、ただ創意と工夫と言うだけではなかなか覚えないというか身に付かない。それを「つくる、おもう、つなぐ」とすることによって社員の心の中に入っていけるのではないかなということを狙ったと。

朝岡:社員の皆さんに「つくる、おもう、つなぐ」の三つは浸透してます?

三須:浸透してると思います。

私どもは毎月一回、全体朝礼をやっています。本社だけでなく支店、工場をテレビでつないでやるんですけども。最後に社是を全員で唱和をするというのをやっています。

お菓子の会社でソフトなイメージがあると思うんですけど、唱和をするという。これは私自身なかなか良いなと思ってるんですけど、そういうことをやりながら全体への浸透をはかっています。

朝岡:やっぱり頭の中だけで知ってるはずとかじゃなくて、みんなで声出してやると、一体感も生まれますよね。

決断 ~ターニングポイント~

2つ目のテーマは「決断」〜ターニングポイント〜。百年の時を越えて食品菓子の製造をおこなってきたカンロ株式会社にとっての転機とは。

石田:会社やご自身にとってのターニングポイント、転機はありますか?

三須:私が以前勤務していた三菱商事で、2004年に食品流通の部長への異動という辞令がくだりました。

もちろん部長になるということで、それそのものは嬉しかったですけども、私の経歴というのはずっと乳製品の原料の輸入というのを20年以上やっておりましたので、当然その分野での道をずっと続けると思っていたものですから、急に流通の分野に変わって大変ショックをうけたといいますか、実は自分がやりたい仕事ではなかったというのがあります。

それが今考えると大きな転機だったのかなと思います。

突然言い渡された辞令。そのとき三須和泰は何を思い、どのような決断をくだしたのか。

三須:私がその頃慕っていた取引先の、明治健康ハムの社長をされていた東野さんという方にグチを聞いてもらうということで飲みに誘って頂きまして。

その時に「三須さん、与えられた道が最良の道という言葉があるよ」と言われました。その時に東野さんからその言葉を書いた書まで頂まして。

それをきっかけに新しいところでもう一回頑張ってみようと感じまして。ちょうど管理職一年目になるところでしたので。自分の座右の銘にして、常に仕事が変わるきっかけがある時には「与えられた道が最良の道」という言葉を思い出しながら仕事を続けてきたということです。

石田:そしてこんな歴史あるカンロの社長になると言われたときは相当なプレッシャーを感じられたのではないでしょうか?

三須:そうですね。結果として食品流通の部長をやったことがカンロの社長に繋がっていくことということになりますので。ある意味2004年の転機の時からカンロの社長というのは決められていたのかもしれないなと思ったんですけども。

カンロという会社は三菱商事の食品流通の中の菓子においては核になる会社でしたので、そこの社長ということで身の引き締まる思いというか、かなりプレッシャーは感じました。

朝岡:三菱商事にいらっしゃって、老舗のカンロの社長になるというのは、カンロの生え抜きの方が社長になるのとはちょっと意味合いが違いますよね。歴史あるカンロの社長に外部からおなりになるということに関して思われたことはありますか?

三須:2代、3代前の社長の中原さんという方がいらっしゃるんですが、三菱商事で部長をしていたときに、三菱商事側からお付き合いをさせて頂いてた社長が中原さん。

私が中原さんによく言われていたのは「三菱商事から社長を出してもらうつもりはない。サポートはしてもらう。専務クラス、常務クラスは出してほしい」ということを言われていましたので、私が社長という辞令が三菱商事の中から出たときに、中原さんのことがすぐ頭に浮かんで、中原さんに電話しました。

「そういう辞令がくだっています」と。中原さんは「三須さんならしょうがないね」と言ってもらえて。それで一息ついたというか、ホッとしたというのはあります。

朝岡:実際に社長に就任なさって、会社に行くと、一緒にお仕事をなさる管理職、幹部、社員の方がいらっしゃる。そことのお付き合いはスムーズでしたか?

三須:幸いなことに2004年に食品流通の部長をやった時からカンロというところとお付き合いをはじめていたので、我が社の幹部クラスの社員のことはほとんど知っていたので、わりと気心しれて仕事に入れたかなと。

朝岡:やっぱり流通のところに行かれた時のターニングポイントが活きて、カンロに行かれた時もスムーズだったということになるんですね。

三須:「与えられた道が最良の道」だったんだなと思います

言魂 ~心に刻む言葉と想い~

3つ目のテーマは「言霊」心に刻む言葉と想い。強い思いと信念が込められた言葉には魂が宿り、人の人生を変える力を秘めている。三須和泰が家族や知人から受けとった想い。そして現在自らの胸に刻む言葉とは?

石田:幼いころ先代や祖父母から言われた印象的な言葉、そこに隠された想いを伺いたいと思います。

三須:子供の頃に父親から短気は損気と何度も言われて怒られたことを覚えています。たぶん当時父に似て短気だったんだと思うんですね。そういう時に父親が自分に似て短気な息子を、自分の反省もあったんだと思うんですけど。

そういう言葉を思い出して、短気が起きそうなときには、短気は損気だと言い聞かして我慢するということに活かされているといえば活かされてるかなと。

じっくり考えるというよりは先に行動してしまうというところもあって、体育会系だとまわりからは言われます。中学から大学までずっと運動部を続けてきたのも影響して、そういう性格というか、すぐ動いてしまう。

朝岡:指揮官先頭なんて言葉があるけど、わりと自分で行くぞ!って言って行っちゃうタイプのリーダーで?

三須:どちらかというとそういうタイプですね。

朝岡:社長となると下を育てるというか、管理職も含めて人材を育てていかないという役割もあるかと思いますが、三須さんがおやりになっている人材育成で大事なことはどんなことですか?

三須:社員によく言う言葉で「4つのC」ということがあります。

一つ目のCはキュリオシティー「好奇心」。常に好奇心旺盛に取り組む。何事にも興味を持ちなさいということ。

二つ目のCはコミュニケーション。メールやネットじゃなくて、実際に会って、目と目で会話をするということが何でも大切なんだと言っています。

三つ目のCはチャレンジ。これは社是にもなってますけども、挑戦するということ。

四つ目はコミットメント。約束して責任をとること。

これを4つのCとして社員に伝えています。どれも当たり前のことではあるんですけども、なかなか実行することが難しい4つではないかなと思います

朝岡:さっきの社是もですが、ぴちっと分けて分かりやすくするというのがお好きなんですね。

三須:社是は私がつくったわけじゃないんですけど。4つのCは分かりやすいかなと。覚えてもらいやすい。

石田:カンロさんはCSR活動にも積極的に取り組んでらっしゃると伺いましたが。

三須:一粒のメッセージということで、人と人とがキャンディーで繋がるということを意識した活動をおこなっています。世界の子供達に物資支援をするとか、あるいは緊急時の支援、教育の支援、地域支援といったことを、キャンディーから得られる収益やノウハウを使って、様々な支援をCSRとしておこなっています。

朝岡:やっぱりお菓子っていうのは口に入れると幸せになるじゃない。ウフッてなる。

石田:笑顔になりますよね。

朝岡:その延長って考えるとわかりやすいですね。

三須:そうですね。馴染みやすいCSRというもの、社員が簡単にできることからスタートするのがカンロのCSR活動の特徴かなと思います。

朝岡:大上段に振りかぶってえらいことやるんだってなると、構えちゃいますからね。

NEXT100 ~時代を超える術~

最後のテーマは「NEXT100年」〜時代を超える術〜。革新を続け、100年先にも継承すべき核となるものとはいったい。長い歴史と共に先代達が綴り、時代を超えて語り継ぐもの、そして変化するもの。100年先の伝承者へ。カンロ株式会社代表取締役社長三須和泰が語る、次代へ届ける長寿企業の知恵とは。

石田:最後に次の100年に向けて変えるべきもの、または変えないもの、会社にとってコアになる部分を教えていただけますか?

三須:カンロの社長になって、カンロが美味しいだけではなくて、安全で安心で誰にでも勧められる商品をつくっている企業だと改めて知って。大変嬉しく思っています。

品質を最優先する精神の根底にあるのがやはりカンロ飴なんですが、素材の自然な美味しさを大切にするという考えはこれからも変えてはいけないものだと、これがコアだと考えています。

素材そのものについてさらに考えると、飴というものは砂糖や水飴などの糖質から出来ています。糖質というのは、体の中に入ってブドウ糖に分解されて、我々の脳の唯一のエネルギー源なんです。そういう意味では人間にとって欠かせない栄養素なんです

ところが最近は糖質ダイエットが流行ってまして、なんとなく糖質が悪者になってしまっているのが非常に気がかりです。糖質というのはご飯にもパンにも入っているわけで、非常に重要な栄養素ですので、私達が元気に生きていくためには糖質を接種するのは不可欠なわけです。

そういう意味でキャンディーメーカーである我々は向かい合って、人々にとって無くてはならない健康的なお菓子をつくる。これが私どもキャンディーメーカーが社会に貢献していけることではないかなと思っています。

朝岡:糖質は考えるうえで欠かせないものでしょ?そこを大事にしていきたいというのはわかりますね。百年先にも同じ事を伝えていきたいと思っていますか?

三須:これからもキャンディーメーカーとして糖を科学するという研究開発を続けていかなければならないと考えています。

朝岡:最初はカンロ飴が看板で、今こうやって色々増えているというところには、糖を科学する、そしてキャンディーで人を繋げて幸せにしたいということの2つが脈々と受け継がれて今に至るということなんですね。

石田:この先はどこを目指しているんでしょう?

三須:去年、中期経営計画、五カ年計画を出しまして、ニューカンロ2021という経営計画なんですけども。そこでもキャンディーNo.1企業になろうと、そういう企業を目指すんだとしています。トップメーカーとして、キャンディーの開発に力を入れて、本当の意味で品質を向上させていこうということを重視していきたいと思っています。

ただカンロというブランドももっと浸透させたいと思っていまして。というのも金のミルクとかピュレグミという商品をご存知の方々もこれがカンロだということをご存知の方は少ないというのが寂しくて。

カンロだから安全で安心なものなんだという風にしていかねばいけませんので。カンロというブランドも浸透させていきたいですし、ゆくゆくは日本でトップということにとどまらず、世界ナンバーワンのキャンディーメーカーめざしていきたいと考えています。

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