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〈後編〉「萬燈照国」特別対談 榮太樓總本鋪 細田安兵衛

登場人物


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「萬燈照国」特別対談インタビュー 榮太樓總本鋪6代目 細田安兵衛〈前編〉
「萬燈照国」特別対談インタビュー 榮太樓總本鋪6代目 細田安兵衛〈中編〉
「萬燈照国」特別対談インタビュー 榮太樓總本鋪6代目 細田安兵衛〈後編〉※本記事

〈第4部〉株式会社榮太樓總本鋪の長寿企業の知恵

日本橋の商人として、次代へ繋ぐもの

田中:会社や事業を存続させるために大切にしていることをお聞きしたいのですが、榮太楼にとって核となるものはありますか?

知恵1:味は親切にあり

細田:作る者も運ぶ者も、売る者も商品にたいして親切で愛情をもって接する必要があります。人に対しても同じでお客様にだけでなく仕入れ業者にも、社員にとっても親切な一貫した態度でなくてはなりません。全ての親切が、味に現れてくるというのを社員に伝えています。

知恵2:苔(こけ)と黴(かび)、粋(いき)と野暮(やぼ)

細田:カビと苔を比べてみてください。同じ古いものでも、カビと苔は違います。カビは勝手に広がりますが、苔は育てないと広がらないよね。苔を育てるためには、ピンセットで雑草を抜いたり、乾燥しないように気を配る必要があります。面倒がって除草剤を撒いたら一貫の終わりです。京都にも有名な苔寺があるけれど、すごいことだよね。一生懸命育てないとそうならない。カビは放っておいても増えていき、慌てて拭いても跡が黒く残ってしまします。
古臭いものは、カビ臭いと嫌われます
が、我々もカビのような古くて臭いものであってはなりません。丁寧に育てられた苔のような存在として、古い企業の存在感を示すのです。

田中:長寿企業大国といわれる日本です。最多の長寿企業がある東京中央区の名誉区民であり最後の大旦那として、次の時代へ届ける長寿企業の知恵について教えていただけますか?

細田:
苔(こけ)と黴(かび)
粋(いき)と野暮(やぼ)
老舗とは自分たちから言うものではなく

知恵3:老舗とは自分たちから言うものではなく、お客様から頂く評価

細田:老舗とはしぐさ(仕事)を似せるということであり、代々伝わってきたしぐさ(仕事)を学ぶこと。だからこそ、老舗とは自分たちから言うものではなく、お客様から頂く評価、言葉である。
また、のれんとは守るものではなく、磨き育てるものであるからこそ、創造性のないのれんは真ののれんではない。
変えてはならないDNAを守り、時代にあった商売(商品開発)へと変革していくことが大事。

知恵4:企業ではなく家業、高級ではなく一流であれ

細田:まず第一に本業を大切にすること。
時代に合わせてコラボレーションしていくことも大切だけれども、本業を忘れてはいけない!

また、同族企業は創業3代目あたりに兄弟喧嘩が良く起きる!
長男こそが頭を下げることと共に、家族の和が大切である。

その上で、高級とは外見的に見せかけのではなく、歴史、伝統、文化というものを意識してのれんを守り、のれん同士はお互いに尊重していく!その度量が大事である。

知恵5:日本橋のDNAを大切にする

細田:ロンドンやパリ、ローマなど古い都は外国にもたくさんあるけれど、なぜ江戸なのかというのはよく考えていた。外国の人たちは、街のDNAというのを理解していないじゃないかという気がするんだな。理解ということは愛着ということだからね。日本橋だと街のためになりたいという気持ちがある。外国は、そういうのが少ないんじゃないかと想像している。街と企業との関連が、私たちほど深くないんじゃないかと思う。海外の企業は代替わりするとガラッと何もかもが変わってしまうことが多いように見受けられます。自分が新しいことを始める、自分の手柄にしようという気持ちがトップにある気がする。海外の企業が、100年企業にならない理由はそこにあるのではないでしょうか。
基本的に我々は流通関連の仕事だから、デパートをはじめ、これからは大変だという憂いはもっていますけどね。具体的にこれからのネット商売をどうしたらいいかというのは、色々考えます。先日も孫に三越の商品券を渡したら、今時はデパートで買い物をしないでインターネットで買うと言われてね。これだけ世の中が変わってきているので、我々小売業は難しい局面にありますが、守るべきものは守らないと継続ということはありえないのではないかと考えています。

ご参加くださった皆様

インタビューアーとして参加くださった皆さまからのコメントをまとめさせていただきました。

また、皆さまからの寄せ書きがこちらです。

『文化人商人 という 粋なふるまい 一期一会の生き方 そして 生きざま 全てが学びの場です』

小川 文男さま(株式会社竺仙 代表取締役)

初めて会社に入って以来、50年近くご指導して下さり、後進への金言(商人としてやっていけないこと、守っていかなければいけないこと、磨き育てなければいけないこと等々)の数々に感謝しております。
これからもよき先輩として益々元気で、のれん会でご活躍いただくだけでなく、江戸・日本橋・日本の象徴としてこれからも引っ張っていってください!!

『博識の粋士』

黒川 光博さま(株式会社虎屋 代表取締役社長)

『僕は年取ったから、次は君たちの番だよっ』と頂くものの、ぜひお言葉を頂戴したいです!
実に的を射たポイントに絞られつつも笑わせながらハッと気づかせていただくご挨拶は、常に意識して聞き入り学ばせて頂いています。
これまでもこれからも和菓子業界の重しであり、良い意味での重鎮であるからこそ目を光らせ、ご指導をよろしくお願い申し上げます。

『月刊日本橋 いつもありがとうございます!感謝!!』

堺 美貴さま(有限会社月刊日本橋 代表取締役)

ちょっとのことでもお手紙を頂ける心遣いと、さりげなく「あなたは頑張りなさいよっ!」とのお声がけに何度も救われました。
日本橋そのものが安兵衛さんであり、日本橋を愛し日本橋という名前を背負う使命感を体現されているお姿が大旦那であり、お会いできて本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
これからも宜しくお願い申し上げます。

『江戸っ子商人 その心意気に 敬意をささげる』

清水 満昭さま(清水建設株式会社 相談役)

大先輩でこれだけ親しみやすい方は他におらず、人間の基本的な付き合い方を一から教えていただき、ありがとうございます。
間違ったことはしっかりと「違う」と教えてくださり、みんなが「こうしたほうがい、ああした方が良い」という議論をしているときには「こうしたらどうだ」と熟考された中での意見で日本橋をまとめてくださり、ありがとうございます。
これからも宜しくお願い申し上げます。

『日本橋の師、のれん会の父、粋を今に伝える。』

髙津 克幸さま(株式会社にんべん 代表取締役社長)

高津伊兵衛の襲名について「襲名をした方が良いぞ!」といただくだけでなく、当時安兵衛さんが襲名された際に皆さまへ送られた手紙も頂戴し、その優しさに感動しました。
祖父も祖母も全て亡くなっている上で、父ではなく今生きているお爺ちゃんという存在です。
経営面だけではなく、文化面(花柳界、日本の文化、日本橋の歴史等)についてさまざまな知恵を頂戴し、感謝の気持ちで一杯です。これからも宜しくお願い申し上げます。

『酒酒落落の人生 うらやましいです』

中村 胤夫さま(名橋日本橋保存会 会長)

安兵衛さんは中央区の名誉区民、日本橋の顔、男が惚れる漢!
江戸の文化をそのままではなく、今の時代に即した表現方法で体現されており、僕たちがそれを受け継がねばならないと強く感じています。
これからも沢山教えていただきたいですし、その教えを少しでも生かせうよう努力して参ります!!

『永遠のミスター日本橋 常に日本橋全体の理想です』

七尾 克久さま(三井不動産株式会社 日本橋街づくり推進部 部長)

安兵衛さんとお会いすることができて、本当に幸せ者です。
三井不動産はこれかれらも日本橋、東京、日本のために頑張って参ります。
今後ともご指導のほど宜しくお願い致します。

『侠』

宮西 修治さま(日枝神社 宮司)

あらゆる面にてご理解ご協力を賜り、ありがとうございます。
これからも日枝神社、そして地域のためによろしくお願い申し上げます。

『私の生涯の恩師 粋なご指導これからも 日本橋よ永遠に! 』

山本 人さま(株式会社山本海苔店 取締役副社長)

本当に大好きで偉大な安兵衛先輩!
段々と年長になると世の中のことを知ってきた気もしますが、ぜひ伝統の文化や江戸からの情緒という知見&見識をこれからもご指導よろしくお願い致します!!

『眼光紙背に徹しつつも 愛情溢れる人生 』

渡辺 孝至さま(株式会社船橋屋 代表取締役会長)

「伝統だけではなく時代に相応した味付け(革新)をするからこそ、世間から老舗と呼んでいただけるのだ!」
「世のため人のためにできることをやろうじゃないか!それができるのが老舗なんだよ!」
「縁あって船橋屋に養子にきて、地域社会にあっての会社なんだよ!地域社会のお陰様!ここまできたら、地域に恩返ししてくこと!」
安兵衛さんからいただいた言葉を胸に精進して参りますので、これからもご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします!

「萬燈照国」特別対談インタビュー 榮太樓總本鋪6代目 細田安兵衛〈前編〉
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