鳥料理 玉ひで
NEXT100 ~時代を超える術~
やはりですね、玉ひでは鶏のすき焼屋ですから、親子丼屋ではなくてすき焼屋だって言われるようなそういう店作りにしていきたいなっていうのが一つありますね。それと、これは玉ひで代々続いてることなので致し方のないことかもしれませんけど、まぁ当然私も息子に代を譲ると思うんですが、その時に息子がどういうお店にするかですよね。
朝岡:あぁー!
山田:で、ひょっとすると、7代目みたいな大衆店がいいという風に思うかもしれませんし、昔のように出張料理の店がいいと思うかもしれませんし、わからないですけど、息子にとって魅力のある店にしたいとは昔から思っておりまして。もう息子も28なんですね。
前回、家族全員でテレビに出てるんですけど、その時に、娘が継ぐのか、長男が継ぐのか、次男が継ぐのかわからないみたいなテレビの編集のされ方をしまして、
えぇえぇ。
山田:で、子どもたちが何を言ってたのか、僕はオンエアまで見てないんですよ。
朝岡:あぁー(笑)
山田:で、テレビのディレクターに隠されて僕はインタビューをずっと答えてたんですけど、
石田:えぇえぇ。
山田:オンエアを見たらですね、三者三様のことを言ってまして、みんな自分が継ぎたいって言ってるんですね。
石田:おぉー!
朝岡:素晴らしいじゃないですか。
山田:これ、すごい良かったなと思ったんですけども、逆に言うとですね、失敗したなと思いまして、全員継ぎたいって言ってるから、選べないんですよ。
石田:うーん。
山田:ただ、もう長男に代を継がせようって決めましたので。
長男にやらせようって風にちょっと前に決めました!えぇ。
でも、三兄弟毛利家の様に三本の矢がくっと強くて太い。
朝岡:そうねー
山田:だけど、三本の矢でも、折れたら1回で折れちゃいますから(笑)
朝岡:あっはっはっは(笑)
山田:別々であった方が良い気がするんですよね(笑)
朝岡:まぁでもあの、ご長男が代表になるにしても、ご兄弟が一緒になってやっていくという形はね、決まってると思うんで、これから100年後の玉ひでというものをちょっとこう考えた時には、やっぱり鶏のすき焼の鶏すきの店なんだということが、まず一番大事な核で、
山田:そうですね。はい。
朝岡:あとはその、代毎に自分の思うところをやってみなさいと、こういうのも引き継がれていく部分ですか?
山田:そうですね。うちがですね、鶏のすき焼って言ってるプライドが一つあってですね、確かめようのないことなので、正直本当かどうかもわかりませんけど、これは、まぁ僕は6代目から、おじいちゃんから聞いた話ですけど、うちの店は初代からずーっと醤油とみりんを使ってて、砂糖と味噌は一切使っていないと。で、他のお店は砂糖と味噌と日本酒で割り下を作ってると。玉ひでは醤油とみりんをずっと使い続けられて、それは、初代から徳川家に仕えてたから、醤油とみりんが優先的に貰えたからなんだって。
石田:へぇー
山田:だから、他の店はできないんだって。だから、玉ひでは醤油とみりんだけの割り下を使い続けるんだと。これがうちの伝統なんだってことを代々伝えて聞いてるんですね。で、今の時代になって、親子丼の発祥の店っていう風に言われてますけど、実際には親子丼を作った5代目のとくもまぁ6代目のおじいちゃんも玉ひでが発祥の店だって知らないんですよ。その頃はこういう風に今みたいにネット社会でも何でもないですから、そのマスコミだとかそういうものもなかったので、5代目の女将のとくにしてもおじいちゃんにしてもですね、ひょっとすると玉ひでが親子丼発祥の店かもしれないと。だけど確証がなかったんです。だけど、7代目の代になって初めて親子丼発祥の店だってわかったんですね。ただ、その頃もまだ、まぁ今もそうかもしれませんけど、すき焼の発祥の店ってのはわからないんです。だけど、逆の言い方をすれば、うちより古い店はないんです。
朝岡:うん。そうですね。
石田:250年…
山田:だからひょっとすると、すき焼っていう、今日本中の方々がすき焼って仰って食べてる食べ物の発祥の店が玉ひでなんじゃないかなという風に思っているんですね。だとすれば、その親子丼発祥も良いんですけど、すき焼発祥っていの方がもうちょっと良いかなと。
朝岡:うーん。
山田:で、これあと100年間言い続ければ、玉ひでが発祥の店になりますから(笑)
朝岡:あっはっはっは(笑)なるほどなー
山田:えぇ。
朝岡:所謂、老舗でいらっしゃるわけで、会社風に言えば長寿企業という形になるんですけども、長く続けていく上で色んな大事なものがあると思いますが、山田さんがお考えになる、その老舗が老舗としてこう続いていくのに必要な大事なものっていうのはあげていただけますかね?
山田:私は、「変わらないように変えていく」と必ず言っているんですね。で、これはですね、うちは飲食店なので、その時代時代によって流行廃りの味ってのがあると思うんですね。で、まぁ極端に変えなければ大概は大丈夫なんでしょうけど、それでも、まぁ簡単に言ってしまえば、濃いものが流行ってる時代に薄いものを出して、薄いものが流行ってる時代に濃いものを出したら、何だこの店って言われるんですよ。だったら味を、多少なりとも時代に合わせて変えてもいいんではないかと思うんですね。
まぁ、要はお客様と店の方向のベクトルが同じ方向に向かっていればいいんじゃないかと思ってまして。で、お客様が「あっ美味しいね、また食べに来たい」って仰って頂けるようなものを常に出していくのが飲食店の仕事で、うちは100年間、200年間味は変えてないんだよっていうのは、それは口ではそう言って、お客様にいかに合わせていくかってのが本音なんじゃないかっていう風に思います。
鳥料理 玉ひで8代目 代表 山田耕之亮
「変わらないように変えていく」
お客さまが美味しいねと言ってくれるものを、提供し続ける事が飲食店の志命であり
その中で、時代が求めるモノを感じ取り、時には味を変える勇気も必要である。
この想いは100年先の後継者へ、受け継がれていく・・・
NEXT100、時代を超える術。
革新を続け、100年先にも継承すべき、「玉ひで」とって、核となるモノ・・・
そして、8代目 代表 山田耕之亮が語る 次代へ届ける長寿企業が持つ知恵とは?