墨田川造船 株式会社
言魂 ~心に刻む言葉と想い~
私の先代の前の社長から、入ったときに「担当した船は自分の船だと思え」と。それの意味が分からなかったんですね。
それはなぜかというと、どういう意志で造ったのか、どういう動かし方をするのか、どういったコンセプトでこの船はいるべきなのかというのを全部理解しろと。それをお客様に説明できなかったら、何のための造船マンといったようなことを言われまして。
変な話、私は大きな船の免許持ってないですけど、動かしてこういう挙動がありますよとか、こういう問題がありますよということを、わかるように説明できるようにはなりましたね。
造船マンとおっしゃいましたけど、船のことは全部説明も出来るし、予測もある程度できるという、そのあたりに自信とプライドを持たないといかんということですか。
石渡:「わかりません」ではお客様は納得しないと思いますね。
朝岡:いろんな経営者が墨田川造船にはいらっしゃると思いますけど、ご自身が過去の経営者を観察なさって、自分が似てること、哲学的にこれは一緒だと思うことはありますか?
石渡:祖父から墨田川造船の経営に石渡家は関わってるんですけど、祖父のことは全くわからないんですよ。3、4歳の頃に他界したので。
父親も昭和生まれの明治男というんですか、家にほとんどいない。それこそ朝起きたらいない。夜寝てから帰ってくるということだったんで、全然接する機会がなかった。逆に今役員になって、社長になって、色々毎日話す機会があって、やっと吸収できるようになったかなという形ですね。
言葉というよりも働きぶりというか。
石渡:行動態度というんですか。昔の職人さんみたいですよね。見て覚えろという感じじゃないかなと。
石田:見て覚えろとおっしゃいましたが、そういう感じで社員の皆さんにも接してらっしゃるんですか?
石渡:今は逆に見て覚えろと言ってもついてこれない方が結構いっぱいいるので、OJTじゃないですけど、「こうやってやるんだよ」とか、「こういうので悩んでるんです」といったときに、直球で答えを言わないで、「これはこうだよね、こうした方が良いんじゃないの?」とかってまわりからアドバイスして、なるべく自分で啓発して、自分で解決するようにという形で流れていくように」すると。
朝岡:船を造るうえで大切な技術者をもっと育てないといけない状況があると思うのですが、そのために人材をどう育成して、良い技術者を育てていくというのは何か考えてらっしゃいますか?
石渡:基本的に色んな業界団体で講習会があるんですけど、100%うちの船づくりに影響するかといったら、基本的なことは覚えられるんですけど、ある程度の蓄積というのは、今までうちで蓄積したデータでないと計り知れないところもありますので。
とにかく現場で教える、その場で教える、いろんなことを含めて教えるということをしないと、ただやれって言っただけでは今の若い人はついてこないので、なるべく一緒になって汗水たらそうっていう形にするようにしています。
ちなみに石渡さんの趣味はそういったものをお持ちなんですか?
石渡:実はオートバイが好きで、仕事や家族もあるので乗る機会があまり無いんですけど、それに触ってるだけで、乗ってることもそうなんですが、普通に分解したり整備したりすることが大好きです。
朝岡:船もエンジンでしょ?オートバイもエンジンですよね。そなへん重なってる感じがしますけどね。
石渡:流れは同じですね。大きいか小さいかの違いだけで基本的にはあまり変わらないんですよね。
石田:オートバイも整備するんですよね?
石渡:しますね。
朝岡:ますます船のメカニックという。
石渡:いやいや、エンジンも今は電子制御とか難しくなってきたので、基本的なことしかできないですけど。エンジニアさんとか業者さんに任せた方が。
ただそこの中でも「こういう風になってるんだ」というのが理解できないとお客さんに説明できないですから。役立ってはいるんでしょうね。
「言霊」心に刻む言葉と想い。強い思いと信念が込められた言葉には魂が宿り、人の人生を変える力を秘めている。石渡秀雄が先代や家族から受け継いだ想い。そして現在自らの胸に刻む言葉とは?