株式会社 船橋屋
言魂 ~心に刻む言葉と想い~
私共の船橋屋という字なんですが、実は文豪の吉川栄治先生に書いて頂いたんですね。宮本武蔵とか書かれていますけども。私どもの黒蜜を食パンにかけながら執筆してたというのが有名な話なんですけれども。実は吉川栄治先生というのは非常に良い名言を持たれていて、いくつかあるんですが、特に二つあります。
ひとつは「我以外皆我師也」という、自分以外はみんな師ですと。例えそれは子供であっても、お年寄りであっても、ひとつひとつに大きな耳を傾けなさいという教えだと思うんですね。これはもの凄い大切にしてきたことです。
もうひとつは登山のことを吉川先生がずっと言われていて。「登山の目標は山頂と決まっている。しかし、人生の面白さはその山頂にはなく、かえって逆境の、山の中腹にある。」本当の登山の醍醐味というのは山の中腹で見る草木であったり景色だったり、それが最も面白いんだと。人生もそういうものなんだよと。
頂点ばかり見ていると見えないものがあるから、ふと止まってまわりを見渡すんだと。そうすると色んなものが見えてくるという教えですね。
それは多くのお客様やお取引先と関わるのが最初の言葉、もうひとつの言葉というのは、経営をしていくという、そっちの方向ですか?
渡辺:まさにそうです。常に今を楽しめということだと思うんですね。今を感じろってことだと思うんです。頭で考えないで、今ここを感じろってことだと思うんです。そこをすごく大切にしています。
スターウォーズの中でもヨーダが同じことを言っていますけど。「今ここにお前はいない」ってルークスカイウォーカーを説教するシーンがありますけど、まさにそこ、今を持つという。それをマネジメントの中にも入れてるんですね。この二つだけはしっかり守っているんですけど。
心に沁みますけれども。渡辺さんは新卒採用の説明会でも学生さんと自らお話になったりとかされるんですよね?
渡辺:我々は新卒採用というのはひとつのイベントとして見ていまして、お陰さまで今1万7000名くらいの新卒の学生さんが殺到する企業になってまして。よくこれだけ下町の和菓子屋さんに入りたいと言ってくれるなと思うんですけれども。
会社説明会がすごく面白いという学生さんの評判があるんですね。我々は選考というよりも、先ほど後ろ姿の話をしましたけれども、やはり社会っていいものなんだよと、仕事っていいものなんだよというのを学生に教えてあげたいなという風に思っていて。多くの企業というのは、我が社はこうだと、こんなもんやってて、こんな目標がありますと、そんなこと言うんですけど、うちの説明会はそういうのはあまり無いんですね。それはちょっと会社説明から読んどいてと言って。
あとは僕が出て行って、「いきなり社長何しにきたの?」ってみんな言うんです。前に出ていって、「君たちが今一番望んでいるものはなんですか?」と言うと「内定欲しいです」ってみんな言うじゃないですか。「じゃあ内定をとれる3つのポイントを教えてあげよう」ってそれだけなんです。「聞きたい人?」って言うとワーって盛り上がるんです。それで3つのポイントを言って。そうするとそれが口コミで広まって。
もちろんそれだけじゃ無いんですが、わざわざたどたどしい社員の1年目とか2年目の子にプレゼンテーションさせるんです。去年の気持ちはこうだった、ああだった、今こんな仕事にやりがいを持っていますという風に言うんですね。だから新卒採用を本格的に始めて10年なんですが、当時200名くらいしか来なかったのが今1万7000名に膨れあがっている。
ポリシーとか考え方が似たような方々が集まっていると思うんですけれども、それだけ社員の皆さんが仲が良いとか、それでイベントがこんな沢山あるとか。
渡辺:よく会社でいがみあっているとかあると思うんですけど、それがよく分からないんですよ。みんな楽しいし。うちは人事評価も上にいけばいく程チームビルディングできないと評価されないようになっているんですね。一人がパフォーマンスを出しても評価しないということになっているので、必然的にみんなでワイワイやりながらやっていくと。中期経営計画も漫画になっているんですよ。
パートの70歳のおばあちゃんもいるので、漫画で3年後の船橋屋はこうなるっていうことを言っていて。表紙にシャレで「1人見厳禁」と。みんなで見てワイワイやっていると。中期経営計画とか理念とかビジョンというのは、みんなのものなんだからと。
つくる時も僕がつくるわけじゃなくて、プロジェクトを組んで、20人くらいで作っていくんですね。それをすると志が共になってくる。常に志というものが一番大切だと思っているので、それはくず餅売るのも採用も一緒ということでやっていると、絆とかつながりを大切にされている世代には凄く響くんじゃないかなと思うんですね。また古いうちみたいな老舗がやっているから面白いんじゃないかなと思いますけど。
コミュニケーションの場がいっぱいあるようなものを意識なさっているじゃないですか?
渡辺:共通の言語といいますか、共通の認識、共通体験を非常に大切にしているので、そういう場を沢山作っています。例えば社内報というのがあるんですが、堅い社内報ではなくて、本当にふざけているんですけど、ひとりひとりにスポットを当てた面白いものになっていて。
その編集も1,2年目の子が編集長やったりとかですね。とっつきにくい部長のところに行ってインタビューしたりとかですね。普段は管理部門にいてあまり目立たない人達にスポットを当てるような内容にしているんです。
あとは夜の運動会というのをやっていまして、仕事終わったあと小学校の体育館を借り切って、大玉転がしやったりとか、玉入れやったりとか、童心に戻ってやったりとか。
あとありがとうを形にするということで、ありがとうカードというのをやっていてですね、複写になっていまして、ちょっとやってもらっていいですかって言って、一枚渡して一枚自分のところに取っておく。そうするとあげた方がどんどん元気になっていくんですね。多い人は600枚とか700枚を年間で、ありがとうという言葉を出していく。言霊というのは本当に大切なので、そこを社内の中に浸透させていく活動をしています。
心に刻む言葉と想い。強い思いと信念が込められた言葉には魂が宿り、一人の人間の人生に大きな影響を与える。渡辺雅司が先代や家族から受け継いだ想い。そして現在自らの胸に刻む言葉とは?