株式会社 土橋園
言魂 ~心に刻む言葉と想い~
続いては“言霊”ということで、幼いころ先代やご家族から言われた、印象的な言葉、そこに隠された思いを伺いたいと思います。
土橋:そうですね、うちの父親からよく言われたのは「商いは飽きない。飽きてはいけないよ」と。やっぱり商いっていうのは飽きて嫌になったらだめだから、飽きずに一生懸命やることだということはおやじからよく言われましたし、それから法人様に一人でも「お前はお茶を売るんじゃないよ」と。「まず自分を売ってこい」と。「自分が信じてもらえないとこでお茶なんて買わないだろ」ということはさんざん言われました。
朝岡:お茶の前に自分ですね。
石田:(笑)
土橋:出すぎたとかそういうことではないんですけどやはり、信用してもらえなければどこのお茶でも同じ分になるんじゃないかと。そうじゃないのはなんだと。土橋園のお茶はどうなんだ!ってことその前に、お前が信用してもらえなかったら買ってくれるわけないだろうと。
朝岡:そういうのは実際、お客様のところに回ってお話しなさったりすると、今言われた言葉なんてかえって実感できたりすることもあったですか?
土橋:やっぱりそうですね。長いお付き合いをしている会社様とはやはり人間関係でつながっているということで。もちろんそのかわり、それをするにはいろんな新しい提案だったり、これもありますとかいつも新しい提案をすることによって「土橋園おもしろいね」っていうことを言ってくれなければ、担当の方もやっぱり信じてもらえないんだと思います。
いつもなにか、いつもいつも、何か新しいものなり違うものなり相手のお客様の立場になって何を一番求めてるのかなってことをいつも提案したいなっていうふうに思ってますね。
素晴らしいですね。では今現在ですね、胸に刻んでらっしゃる言葉というのはございますか?
土橋:そうですね、堀紘一さんの著書にあったんですけどニーチェの「脱皮しない蛇は死ぬ」ですね。これはやはり何かいつもしてないとダメなんじゃないでしょうかと。
あとは私、柄にもないんですけどサミエル・ウルマンの「青春とは」って言葉が好きでして。40代のころは毎年手帳の一番最初にあれを全部書いてたんです。最初だけですけどやっぱり「青春とは人生のある期間を言うのではなく心の有様を言うのだ」と。で「人は年を重ねただけで人は老いない」と。「理想を失う時に精神は萎む」と。これが好きで。ちょっと前に見た時も松下幸之助さんもそのようなことを言ってらしてやっぱり人間も成長しなければということで。松下幸之助さんの言葉だと「青春とは心の若さである」と表現、まぁたぶんおなじようなこと、これと同じようなことかな、と思ってますね。この年になってもまだ気持ちだけは・・・(笑)
(笑)
朝岡:(笑)やっぱりそれは社員の方々ともそんなお話は、まぁ言葉をネタにと言いますか、お話になったりする機会も多いんですか?社内では。
土橋:私もお酒が嫌いじゃないんで、飲みにケーションというところで、酔うとついいつも同じようなことを言っちゃう(笑)
朝岡:(笑)でもそれは気持ちがね、どういうことを考えてるかって社長がわかるにはもってこいの機会ですね。
土橋:私自身はそう思っているんですけど、やっぱり社員には「向こう傷には問わない」 要するに、積極的にやって失敗したことはいいじゃないかと。失敗するよりもやらないことのほうが一番よくないと言ってますから。ですから向こうからやってきてぶつかってって切られたら、その傷に対しては失敗があってもそれは問わないよと。やっぱなんかじっとしてるなよ!って(笑)
石田:ちなみにですね、先代というのはお父様でいらっしゃるんですよね?お父様はどういった方だったんでしょうか?
土橋:細かいことにこだわらなくて、くよくよしない人でした(笑)大雑把な人で(笑)
朝岡:あー。
石田:ドーンとかまえて?
土橋:やりたきゃやったら?みたいなところがあって、だから息子の僕がいろんな事やっても「やったら?」みたいな(笑)
石田:その精神は引き継いでいらっしゃるような気がします。
土橋:いやいやいや(笑)
朝岡:反面教師のタイプのね、お父様とかお母さまとかもいるけれども土橋さんの場合は受け継ぐ部分がかなり多い先代でいらっしゃったという風にお見受けしますけどね。
土橋:自分では意識したこと無いんですけどね(笑)
石田:創業者の方から言われ続けている言葉、信念などございましたら教えていただけますか。
土橋:難しいですね。信念なんてなくて一年中その場その場でやってもいい気がするんですけど、この100年以上続いた会社を僕の代で絶対に潰さないところでしょうか。それがやっぱり僕としての一番心の底にあるところだと思います。あとは、この会社を支えるのはやっぱり人間・・・要するに社員さんがどれだけ力になってくれるか、ということであるかなと。それも先ほど申しました人間が会社の財産でありますけれども、人間教育なのかなって思ってます。
石田:では続きまして、代々引き継がれてるものって何かございますか?
土橋:なんでしょうこのいい加減なところでしょうか(笑)
石田:いやいやいや(笑)お品物が何かあったりですとか掛け軸だとか・・・
土橋:特別そういうものは・・・ビルにしました45年くらいですか?新社屋に来た時から戦前からあった「看板」ですね。「土橋園」っていうのは今でも壁に埋め込めさせてもらってるということですね。あとはうちの親父は何かを残すというよりも背中を見て育てという方ですからうちの親父の肩幅の広いところくらいしか(笑)
朝岡:ねぇ。パッと看板が埋め込まれててね、お店をこう見つめ続けてるということですよね。まあ馬術をね、学生時代からおやりになっているそうで、あれも繰り返しの中に発見があったり、また新しい段階になってったりというスポーツだと思いますけど、ご自身日常生活の中でルーティンワークにしてることとか何かあるんですか?
土橋:なんでしょうこのいい加減なところでしょうか(笑)毎朝仏壇に手を合わせてお線香をあげて、お茶をあげて水をあげてというくらいでしょうか。でやっぱり私の親父もいつも毎朝仏壇の前で商売繁盛、家内安全と唱えてたんで、なんかいつの間にかそんないうようなことをしてるということでしょうか。
あとはもうちょっと私は朝風呂が好きなもんで朝から入って、風呂入って。他人の前に出るときに・・・なんていうんでしょうみっともない格好をするなと人の前に出る以上はきちっとしなさいということでそれだけはさせていただいてます。
そうですか。
心に刻む 言葉と想い
強い想いと信念が込められた言葉には魂が宿り、人の人生に大きな影響を与える。
土橋武雄が家族や知人、偉人から受け取った想い、そして自らの胸に刻む言葉とは。