株式会社 土橋園
オープニング・創業の精神 ~家訓や理念誕生の経緯~
今回のゲストは株式会社土橋園、代表取締役社長、土橋武雄さんです。よろしくお願い致します。
一同:よろしくお願いいたします。
朝岡:早速ですが、土橋園さんの事業の内容というのは一口にお茶と言ってもいろいろあると思いますけれども。
土橋:リーフのお茶、それから今特に力を入れてるのはそれ(リーフのお茶)を全部粉末にして全部丸ごと飲めるようにと言うことと、それからメインの事業としましては自動給茶機。
朝岡:自動給茶機?
土橋:はい。ボタンを押すと自動で・・・よくオフィスにあると思うんでございます。あれの販売・リース、それからレンタル、中身の補充、機械の清掃まで一貫して請け負ってるというのが今のところうちのメインの仕事だと思います。
石田:そうですか。土橋さんは今何代目でいらっしゃるんですか?
土橋:世代的には3代目なんです。おじいさんが興したんですけれども、その間に長兄・次兄と社長をしましたんで、僕で5代目の社長ということになります。
朝岡:土橋園さんの強みと言いますか、特徴・・・いろいろ業界、会社とかお店とかいっぱいあると思うんですけれども、どういうところにありますか?
土橋:掛川地区なんですけれども、静岡県掛川なんですけれども生産者と一体となってるということなのかと思います。我々がどんなにこのお茶が欲しいといっても生産農家がそれを作っていただかなければそれはできないわけでございますから、そういう意味では生産農家とコミュニケーション、飲みニケーションも含めて入ってって、「来年はこんなところ変えたいよね」ということで全部してもらってるっていうのが強みなのかな、というふうに思ってます。
朝岡:掛川の名前が出ましたけれども、土橋園さんのずっと歴史とともに生産農家の方とお付き合いが続いている。
土橋:そうですね、戦前はともかく戦後からはずっと続けさせてもらっているということでございます。 2代目の私の父になります土橋鉄五郎になってからのお付き合いになります。ずっと繋がらせていただいてます。
朝岡:そうですか。
石田:そうですか。そしてこちらには土橋園さんの商品をこちらにお持ちいただきましたけれども、ご説明頂けますでしょうか?
土橋:これは先程お話しした通り、全部いろんなものをですね、粉末にしたり抽出してからそれを乾燥させてドライ製法にしたりしたのもあるんですが、こちらの方にあるのはうちの新しく出た機械なんですけれども、全部粉砕として丸ごと砕いてしまったもの。全部粉砕というかたちで細かくしまして、丸ごと飲めるようにというかたちで。
それと簡易でどこに行ってもお湯、水さえあればすぐ飲めるよというようなところがメインなのかなと思ってます。
そうですか。いろいろありますね。
土橋:はい。なんでも粉末にしてしまいますので。
石田:(笑)
朝岡:いやでも粉末にするのはなかなか難しいとお聞きしましたけれども、丸ごと飲めるのもあるんですか?(商品を指して)こっちですか?
土橋:こういうのも全部そうです。名前がこれちょっと恥ずかしいんですけれども(笑)
石田:ネーミングがドバッチャっていうのは(笑)
土橋:恥ずかしいんですけれども、ええ。これもカテキン増量茶で、カテキンが「ドバッと入ってる」という意味で。お恥ずかしいんですけれども。
朝岡:(笑)
石田:それはちょっと土橋園さんとかけてるんですか?
土橋:そんなような名前で。
朝岡:そうですか
土橋:それはテアニンが増量中で甘み。こちらはカテキンですから渋みが強いんですけれども、みんなテアニンで甘みを十分に、一番強調したお茶でございますね。
朝岡:そうですか。
石田:ウーロン茶でそういった粉末タイプというのは珍しいですよね。
土橋:いえいえ何でもございますよ。それと、今一番力を入れているのが、後でご覧になるかもしれないけれどもお抹茶を、それにですね、水でも解けるようにしてるというのも含めて、基本的にもお抹茶っていうのは全部お茶を砕くわけですよね。
石田:はい。
土橋:ですからそういった意味ではお抹茶の定義というのは蒸気で蒸した後、揉まないで乾燥させて、それを石臼で摩るっていうのが抹茶の定義ですから、それをお煎茶の方にも加えていって、みんなそういう形にしていこうって話ですから。今は石臼ではなくって機械で非常に効率の良い機械が・・・
石田:ええ。
土橋:ありますけれども。
朝岡:あれですか?これ新しいハーブティーなどの新しいお茶の提案などなさってて、周りの反応とかはいかがなもんですか?
土橋:ハーブティ・・・フレーバーティという感じでフランス人シェフの方とそういうのでコラボしながらですね、お茶になんでこういう香りをつけてはいけないんだと、そういう風に今世界的に潮流でございまして、特にドイツあたりの紅茶にも全部そういうのをご存知かと思いますけど、それを日本茶で、日本茶の良さを消さないでできないかというのが最初の発想でございますね。
朝岡:はーそうですか。色んなね?
石田:そうですね、色んなそういう斬新な商品がたくさんあるんですけれども、そういったアイディアはどこから生まれるんですか?
土橋:なんとかお茶っていうと大変失礼ですけど、お年寄りが飲むものじゃなくて若い人にもアピールできないかと、それからペットボトル以外にもそういうのができないかと、そういうところから、どういう風にできないかなということでやっております。
朝岡:それは土橋さんの代になってからかなり・・・
土橋:はいそうです。
朝岡:アイディアマンですね!
土橋:そんなことないんですけど。いつも同じところにいたらまずいんじゃないかなと思いまして。伝統を繋いでるんですけれども伝統を繋いでるだけじゃ生きていけませんから必ず新しいこともやっていかなきゃいけないなと思って色々考えているというわけです。そのヒントはうちの女性社員かなんかがいろんな飲み物をいつも持ってくるんですね。ペットにしても何にしても。それはやっぱり「そうなんだ」というところからですね。
朝岡:そういうところからですか。
石田:お茶に関しては何でもご存知かと思うんですけれども、ぜひお客様をおもてなしする際の美味しいお茶の淹れ方というのを教えていただきたいんですけれども。何かポイントとかございますか?
土橋:いやいやそんな難しいことは私は(笑)。本当にお茶はですね団欒、お茶を飲むというよりも、時間を買うみたいなところがあると思うんですよね。時間をどう大切にするかっていう意味ですから。
お茶の入れ方っていうのはごく普通にみなさんいれていただいて、その代わり自分にあったような入れ方、お茶を入れたものに氷を入れて冷たくして飲むのもよし、ティーカップで飲むもよし、お猪口みたいなもので飲んでもいいのかな、とかですね、それはその方が自分がどう団欒の時間を使うか、ということをお考えになればよろしいのかなっていう風に思います。
なるほどねー。
石田:こちらに、土橋園さんの商品をご用意いただきましたけれども、こちらは?
土橋:これはですね水でも解けるような仕立て抹茶という名前で売ってるんですけど、すぐ解けるようにしてるんですね。それでミルクを加えたもので抹茶ラテになってますので。
朝岡:抹茶ラテになってるんですね?
土橋:はい、なってます。どうぞ。
石田:いただきますー。(飲んで)あっ確かに。しっかり・・・抹茶の味が濃いですね。
土橋:(笑)
朝岡:(笑)
石田:しっかりと、香りも。
土橋:これが全部水で溶けてますところが、先ほどからお話ししている、要するに、手軽にっていうのはおかしいんですけど、やはりすぐ飲めるのが大事かなっていう風に思いまして。
朝岡:はいはい。抹茶ってどうしても手がね、かかるというイメージがあるんですが。
土橋:お湯で解かないとダマダマになっちゃいますでしょ?それがなってないと思うんですけれども。
朝岡:本当。きめ細かくてね!
石田:まろやかです。
朝岡:美味しいよね?!
石田:美味しいですー。
朝岡:冷たくてもこんなにすぐ溶けてね。カーッとこう飲むと抹茶のあの・・・(笑)うん。重み浮かんじゃうね。
石田:そうですね。老若男女に受けそうな。
土橋:口触りは最後の方抹茶の香りが残りますよね。
朝岡:ふわーっとね。
石田:美味しい〜。
朝岡:これを今までやったとこはなかったんですか?!
土橋:いや、やっぱりお抹茶売りのお抹茶屋さんはちゃんときちっとやれということだったんですけれども、我々はどうしたら先ほど申しましたように、若い人とかそういう方には手短に味わって・・・まぁ入門編でしょうか。やっぱりその先は茶道の方に行っていただければいいかと思うんですけどね。
朝岡:入り口を広げて。
土橋:はい。でも美味しく飲めるっていうのが一番大事かなと思ってますね。美味しく簡単に。
石田:へー。確かにこんなに素敵なものが簡単におうちで出せたら嬉しいですよね。
土橋:本当に難しいことはないんで。こんな粉でもってスプーンでとっていただければいいわけですから。
朝岡:(商品を手にして)あっほら抹茶ラテって書いてある。
石田:本当ですね!お試しサイズもあるんですね。
土橋:はい(笑)
朝岡:ほらだって見てくださいこの粉末これこういう感じ。
石田:ほー。細かいですねー。
朝岡:だからさらさら〜と溶けちゃうんだ。
土橋:ええ。ですからですね、お抹茶ですともうちょっとこうなんでしょうか、ダマになりやすいんですが。ちょっと改良して
石田:溶けやすいように?
土橋:その辺がまあうちの
朝岡:アイディアだなー。
石田:なるほど〜。
朝岡:「お茶屋が作った」この一言が
石田:またー(笑)
土橋:(笑)
石田:惹かれますよねー。
朝岡:お茶屋が作った!あっそうか飲んでみようか!ってね
石田:なります。
朝岡:さっすが土橋園さんだ。ありがとうございます。
石田:ありがとうございます。
朝岡:でも日本茶の需要というのはどうなんでしょう、比べると以前と比べて減ってるんですか?そんなんでもないんですか?
土橋:茶葉の生産量は私がお茶に入ったっていうか学校卒業して入った頃には10万トン強あったんですけれども、最近では茶葉は8万トンを切るくらいになってますね。
でもお茶を飲む機会はペット(ペットボトル)の普及によって増えたんじゃないかと思ってます。
あーそうですか。
土橋:昔みたいに急須で入れるという茶葉が憂機が伸びないっていうのと、実際はそう意味でこういうのとか(粉末状のお茶)、ペットボトルとかでは非常にお茶はよく飲まれてますよね、海外にも非常に出てるということですから。やっぱりそういう意味ではそんなに減ってないのかなと。
お茶を飲むことは減ってない、茶葉の売り上げが減ってるということなのかなと。
なるほど。
ここからは、各テーマを元に、土橋武雄の言葉から
歴史と伝統の裏に隠された物語、長寿の知恵に迫る…。
最初のテーマは、「創業の精神」
創業から現在に至るまでの経緯、先代達から受け継がれてきた想いに迫る。
うちは場所をほとんど変わらずに赤坂一つ木通りのほぼ中央で、明治25年に私の爺さん・・・祖父になりますけど、開業したということでございます。もちろんうちの祖父は元々の名前が、「あらい」という名前だったんですけれども。青山通りにありました土橋園というところにですね、修行をして昔でいうところの養子にですね、養子縁組をして、で土橋園の名をいただいたというのが始まりでございます。
その後は関東大震災、それから昭和20年の下町大空襲じゃなくて5月25日の山手大空襲それでもまた全部焼けまして、2度も完全に。それで復興復興という歴史をもってまいりました。
その昔からは、赤坂の料亭とかありましたんで、その辺りにお茶を収めてた。
それから戦前からなんですけど、うちの父が弟子を連れて大八車で、その頃はもう丸ビルとかあった頃で、まあ戦前ですけどそういうところに大八車引きながら法人用のお茶を収めに言ってたというところですね。
後は戦後、私が会社に入ってからは、今までの法人の収めだけじゃなくてと思った時に、会社でもって「女性のお茶くみ社員」っていうのが問題になって、やはりこれはなんとかできないかな、という時にちょうど自動給茶機っていうのが出てまいりまして、でこれの、これはなんとか女性のお茶くみ・・・なんていうんでしょうか廃止というのか、これはある意味福利厚生という意味でも会社がそういうのを用いるようになってって。
私はそういう意味では最初の給茶機のリース。先ほどもお話ししたリース業、リースっていうのが昭和43年ぐらいの頃は私自身リースということを知らなかったので、日本じゃその頃1社か2社・・・だったのかなっていうのが、私のお得意様の方からですね「こういうのもあるよ」と。メジャーの会社でございますので海外に資産を置かないということで、要するに財産にしない給茶機を買い取らない、要するにいつでも何かあった時には元の国に帰れてしまう、というリースという世の中に。自動車もリース。ちょうど始まった頃だと思うんですけど、それで給茶機の方に。やはりオフィスの需要というのはいつまでたってもお茶くみの女性が朝入れて、10時に入れて、お昼休みって言うことでいつでも。社員さん全部が自分で飲みに行けばいいというような形でそれを提案したというあたりでしょうか。
それからが給茶機のアレが広がっているでしょう。今は、どこのオフィスにも入っているんでしょうけど。
そういう意味では日本のお茶の環境というかね、文化の一端も変えてきたのが土橋園さんの歴史の中にはあるいう風に考えてもいいかもしれない。
土橋:その辺はあるかもしれません。その辺は急須に入れるというのと、茶葉にこだわるっていうのも大事なことなんでしょうけれども、うちはやっぱりそれよりもお客様が望むもの、やっぱり事務所のそういう形はなんていうんでしょう福利厚生それから女性社員のより良い活用みたいなものを提案していくことによって伸びてきたのかなっていうように持ってます。
朝岡:給茶機は確かに大変な変革のきっかけになったと思うんですけど、出てきた当時っていうのは反応なんていうのはどうだったんですか?
土橋:お茶屋さんが全部が「あんなものが」という言い方(笑)こんなこと言ったら失礼かもしれないんですけど、そういう評判だったんですけど、これはもう絶対に女性のお茶くみを解放する、別に会社に美味しいお茶を飲みに来てるわけじゃないでしょうと。会社の、女性社員さんの効率化っていうんでしょうか、仕事の。それにはこれは欠かせないもんじゃないかと。必ず広まっていくなっていうように思いました。朝岡さんの元会社のテレビ朝日さんも入ってましたですね。
朝岡:入ってた入ってた。各フロアーに置いてあるんですよ。食器とか簡単に洗うような洗い場みたいなのがあって。そこに必ず給茶機があって。
土橋:ちょっと中身を入れさせていただいたこともあります。
朝岡:あーそうですか。じゃあそのころからお世話になってますね。ありがとうございます(笑)いろんなことお考えですね、土橋園さんね。
石田:そして最近では通販にも力を入れていらっしゃるそうですよね。
土橋:そうですね。テレビ朝日さんじゃないですけどTBS系のアレなんですけど、やらしていただいてます。もう10年になるんですかね。そういう意味では。
朝岡:でもあれですね、給茶機といい通販といいね、お茶っていうお茶の売り方ってだいたいお茶屋さんがあってね、そこでお客さんが来て、いわゆる主との対面販売というか、そのお話をしながら、選んだり・・・みたいなイメージがとても強かったんですが、それとはまた一線を画した新しい時代にあった売り方というか。
土橋:確かにうちの店舗でもそういう形はきちっと残しております。伝統的なお茶はですね、飲んでいただくお客様本当に大事にしてやってるんですけど、やはりより多く広がっていくのはそっちなのかなという風に思ってますね。
石田:そして今欧米などでは日本食ブームですけれども、やはり日本食とセットで日本茶もやはりニーズが高いと思うんですけれどもいかがでしょうか、海外展開などは・・・
土橋:そうですね、海外展開もこの何年かワールドティーエキスポっていうんですかWTEっていうんで、それにも参加させていただいて、徐々に徐々にアメリカのお客様にも出てるんですけど、やはり逆にアジアの方がより多く広がるのが早いですね。タイとか香港とか・・・はい。欧米のお客さんはグリーンティっていうと日本茶と思ってないんで。グリーンティであれば中国の方からの緑茶ですから。我々としては本物の日本茶、日本緑茶を売っていきたいなというのは、そういう意味ではこういう抹茶とか絶対崩せない部分はあるのかなって思っているんで。
朝岡:そうなると茶葉、お茶の葉っぱへのこだわりというのも大事なものになってくると思うんですよね。
土橋:ええ。本当やはりお茶は外観形ですね、形状・・・お茶の形それから香りそれから水の色って書いて「水色」、お茶の色ですね、最後はやっぱり「地味」、味だと思うんですよね。やはり味にこだわってますね。味というのはやっぱりテアニンの甘み、カテキンの渋みとかこの調和のバランスだと思うんですね。そこのところはやっぱり「感応」っていうんですかね。感じる方の・・が、どれだけ頑張れるかということだと思ってます。
朝岡:ふんふんふんふん。いろいろ要素がありますね。
石田:はい。
土橋:すみません、専門的なことばかり言って。
朝岡:いやいやいやいや。
今回のゲストは、「土橋園」5代目土橋武雄(どばしたけお)。
1892年、初代土橋鐵五郎が赤坂一ツ木通りで茶専門店を開業。
昭和に入り給茶機が開発され、企業に急速に普及すると共に、
給茶機用の茶葉や粉末茶を他社に先駆け、開発したことが大きな転換となる。
現在は大手企業の他、和食チェーンやホテル、航空会社などへの外商に加え
あらゆるメディアを通じ、日本茶を始め、フレーバーティーや茶成分を活かした健康茶の新製品を販売。海外に向けて市場も拡大している。
今回は、そんな土橋園 5代目 土橋武雄(どばしたけお)の言葉から
長寿企業の持つ、「知恵の真髄」に迫る!