株式会社 ちんや
決断 ~ターニングポイント~
4つあるんですけれども、まずは狆をやめて牛鍋になった明治維新ですよね。
朝岡:創業の頃ですよね?
住吉:ええ。創業の時ですね。それから浅草は関東大震災、それから昭和の戦争の大空襲で2回丸焼けになってますね。それで再建した、それぞれ再建したっていう・・・
それから1970年代に浅草街全体がとっても寂れたっていうことがありまして。私の代になってからは2001年にBSEの問題。
あーありましたね。
住吉:ありまして、これは牛食べたら死んじゃうっていうっていう話でしたので、結構売り上げも急に半分になったりしてですね・・・
朝岡:あららららら。
住吉:ええ。これはちょっとした時期でしたね。
朝岡:それはどのように打開していったというか乗り越えていったというか・・・・
住吉:そうですね。安全性は1年くらい国の方で全頭検査っていうのをやるようになってましたので、それをクリア、大丈夫ですよってことで2002年には安全はきっちりできてますということになったので、それは手前どもっていうことよりも、国全体としてまずやって、次はこれ(肉)をどうやって口に運んでいただくっていうところで、これは結局美味しさに突っ込んでいくしかなかったんですけれども。おいしいっていうこと、すき焼きを食べるお肉を食べるってことがどれだけ人様をハッピーにできるかってことですね、そこをしっかり考えて「このくらい美味しくないとダメでしょう」というところ、どうしてお美味しさに突っ込んでいってっていうことをそうですね2001年から今日までずーっとこれはやらなきゃいけないってことで。それで先ほど申した「適刺し肉宣言」にたどり着くんですけど。油のこと以外も、赤身のこととかも。いろいろ。あと香りのこととか・・・やっていうことになった契機、2001年のBSEの問題で。逆に言うとあれ(BSE)がなかったらあんまり研究してなかったかもしれない。
朝岡:まぁポピュラーなお料理だからね。
住吉:あんまり突っ込んでは、研究してなかったかもしれないですね。(BSEが)なかったら。
朝岡:それこそ「災い転じてなんとかとなす」ってね、やつですよね。
住吉:今はそんなこと言ってますけどね、当時は結構大変でしたね。
朝岡:そうですか。
住吉:美味しさを研究したら確実に再建できるっていうことは全然見通せないんですよ、一生懸命やったって食べていただかなきゃダメでしょ?という可能性もあったので。結果的には存続しましたけどね。見込みがあったわけじゃないので。そこは精神的にはちょっと揺れたところはありましたね。
石田:そんな中、社長が就任されてからですね、新しい制度を作られたっていうのを聞きましたけれども。
住吉:あ!はいはい。すき焼きをどういうタイミングで、どういう気持ちで食べていただいたらいいかなってことをちょっと考えたりしましてですね、記念日におじいちゃんの誕生日であったり、逆に仏の方、法事であったり、それぞれ皆さん日付をお持ちじゃないですか。そういうタイミングで、そういう時はすき焼き屋だよっていうことをですね、或いはお彼岸参りの帰りでもいいですし、お正月参りの帰りでもいいし。手前ども元々会員制度はあったんですけれども、1日登録エントリーしてくださいませんかと。(エントリー)くださったら割引、特典がございますという制度を作りまして・・・「誕生日教えてください」ってお店に言われるとあまりいい気はしませんよね、個人情報だし。じゃなくって、自分のこの日はすき焼き食べたい日っていうのを登録してください、よかったら登録してくださいっていう風にして、そういう日にその方にとって特別な日はすき焼き。その方の思い出の味付ですよね。食べるものはすき焼きってことにしませんか?ということをやってみましたら結構使っていただける。結構記念日とかね。何をエントリーするかはご自由なんです。
会社やっている社長さんなんかは創業記念日とか、社員さん連れてきて宴会するとか。なんでもいいんです、そういうのをやってます。
それは事前に聞かれるんですか?その日はなんの日ですかっていうのは先に聞いておかれるんですか?
住吉:そうです。その記念日の種類も書いてもらうんです。自分の誕生日とか、お孫さんの誕生日とか。結構その方から予約が入ると、「お孫さんの誕生日だなー」とかこちらもわかりますので、変な話ですけど、割引して気持ちがいい。あの店って割引するってあんまり気持ちよくないんですよ(笑)基本的には。
朝岡:割引してよ!って言われちゃうとね、余計にね。
住吉:あんまり気持ちよくないんですけど、恒例で割引するのはこちらもね「ああ、結婚記念日なんだ。おめでとうございます」ってそういう日に来ていただいて有り難いです、嬉しいですっていう気持ちで割引できるっていう。変な話ですけど(笑)
石田:サプライズがあったりとかするんですか?
住吉:そうですね、一つ用意してるのが牛脂。最初に油引きますでしょ?
朝岡:ああ、あの白いやつですね。
住吉:あれを敷くんですけど。あれをハート型にしましてね(笑)
朝岡:あれをハート型にする?!
住吉:めでたい日しか使えないんですけど、めでたくない記念日じゃあんまり使いづらいんですけど。
石田:結婚記念日だったら、二人の愛のハートが溶けますよ、みたいなね。
住吉:これも名前をつけて商標登録しましてね。「牛ゅっとハート」。
朝岡:ギュットハート(笑)。
住吉:ええ(笑)。「ギュ」が「牛」なんですけれども。これは手前どもの登録商標でございます。ちょっとデジカメで撮っていただいてネットの方にあげていただいたり、ちょっとした楽しみにもなるのかなってね。
朝岡:それはまた広告にもなりますよね。巡り巡って口コミとかね。
住吉:ええ口コミが広がってね。
石田:インスタ映えしますもんね!
住吉:なんか画があると楽しいじゃないですか。
朝岡:これでもなんか、我ながら良いアイディアだなとお思いになっているでしょ?
住吉:ちょっと思ってるかもしれないですね(笑)
石田:(笑)
朝岡:だいたいね、すき焼きってご馳走ですからね。我が家ですき焼きだよっていうと「なんか良いことあったの?」ってね、そういうものですよね。
住吉:ええ。
朝岡:それをお店やってくれて、割引してくれるって言ったらね、人生誕生日は一回しかないけど記念日っていうのは、人生何回やったって良いんだから。
石田:そういうことですね。
朝岡:うまく収まりますよね。石田さんもそう思ってるでしょ。
石田:ええ。もちろんですよ。
住吉:なんでも良いんです。自分にとっては、こういう日はすき焼きの日って自分のアイディアっていうんですかね。
石田:がハッピーになるようにとか、良い思い出になるようにすき焼きを提供されているっておっしゃってましたけど、確かにみんなでお鍋を囲んで良い思い出を作るのもあれば、一人で故人を偲んで思い出の日を。
住吉:ええ、それもまあ立派な思い出で。すき焼きって多分「思い出」って言葉に一番近い食べ物じゃないかなとあるとき思ってですね、他に美味しい食べ物もいっぱいありますけどね、一番近いかなっていう風に思ったりしますね。
決断・ターニングポイント
これまでにすき焼きちんやに訪れた苦境
それらを乗り越えるべく、先代達が下した決断、
その裏に隠された物語とは?