有限会社 日本橋弁松総本店
言魂 ~心に刻む言葉と想い~
幼いころ先代や祖父母から言われた印象的な言葉、そこに隠された想いを伺いたいと思います。
樋口:先代にうちを継ぐか継がないかといった頃に言われたことだと思います。「弁当屋という仕事は無くならない」という言葉ですね。
同じ老舗仲間でも色んなものを扱ってますが、扱ってるもの自体が今あまり必要とされなくなってきていて、この先残るのかというお店もありますし、同じ食べ物でも昔程あまり食べなくなってしまったものというのもあります。
その中で弁当というのはたぶん無くなることはない、むしろどんどん増えているような感じがしますので、最初にその言葉を聞いたとき、自分の店を継げば仕事は安泰だと思いました。ただ今思うのは、弁当屋は無くならないと思うんですが、弁松は下手したらは無くなるかもしれないという危機感はあります。
でもお弁当って日本だけの文化だと思うんです。海外だとテイクアウトはあるけれど、弁当って形で売っているのはまずないですよね。
サンドイッチとかは売ってるけど、日本ほどバラエティに富んでいて、しかも江戸時代からある会社がお弁当専門というのは、日本の文化だと思うんですよね。で日本橋ですからね。会社だけじゃなくて、他の活動というか、江戸みたいなものとの関わりというのも法被から感じるんですが、何かされていませんか?
まず夜中から仕事が始まるんですね。0時とか1時に工場に行って仕事をしてるもので、なかなか地域の会合が夕方からとかなので、出る事ができないんですよ。
皆さんの時間にあわせてお手伝いすることはなかなか出来ないんですけど、自分の出来る時間、午前中だとか昼過ぎくらいまでで、まれにお客さんで日本橋の街をガイドしてほしいという方もいらっしゃるので、そういった時は自分がこの格好でガイドに。
社長じゃなくて日本橋ガイドになっちゃう?
樋口:日本橋のツアーというのは色んな方がやってらっしゃいます。ただ老舗の人間が実際にご案内することの違いは、一般の方は、弁松に来て、ここにはこういう歴史があるで終わっちゃうんですよ。
老舗の人間が行くと知り合いばっかりなので、中に入って若旦那とか社長に直接説明しろみたいな感じで。あとはどこまで言っていいのかというのはありますけど、ここの老舗の商品は素晴らしいけど、旦那は最低だとか、そういう裏話もお話できる。
ビジネスにするのは難しいけど、それに参加できたらもの凄く楽しいと思う。
樋口:旦那が最低だというのは冗談だとしても、ネットやガイドブックではわからないようなお店の個性というか人柄がわかると親近感は必ず湧くと思うんですよ。
個人的に目指してるのは老舗というのはなんか普通の人からすると敷居が高いというのがあって。確かに店構えがどっしりしていて、ごつい番頭が入口にいると入りづらいというお店もありますけど、入ってみたら楽しい。良いものが沢山ある。そういったのを日本橋エリア限定になってしまいますけど、もっと広めたいというのがあって、ガイドをしています。
3つ目のテーマは「言霊」心に刻む言葉と想い。強い思いと信念が込められた言葉には魂が宿り、人の人生を変える力を秘めている。弁末総本店八代目樋口純一が先代、家族から受けとった言葉。その裏に隠された想いとは?