Story ~長寿企業の知恵~ 「 決断 」
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株式会社 山本海苔店
決断 ~ターニングポイント~

ナレーション

続いてのテーマは「決断~ターニングポイント~」
山本海苔の現在の代表を務める6代目山本德治郎のターニングポイントとは。

德次郎:

私のターニングポイントは、やはり父が亡くなって、社長になってそして「德治郎」を襲名したってことです。
最初のうちは、德治郎って書くたんびに、「長い歴史を背負っていかないといけないんだ」という覚悟をものすごく名前を書くたんびに思いましたし、それは自分にとって大きなターニングポイントだった風に思います。
名前を継ぐっていうのは重い。社長になるっていうのはなかなか大変なことですけれども、それをよりも、私の意思としては名前を継いだ時の方が。
半年ぐらいの差しかないんですけどね、やっぱり家庭裁判所に行って名前を変えるっていう。色んな資料を揃えて。名前を変える事は非常に会社にとって必要だし、個人にとっても必要だって言うことを、家庭裁判所に行って、述べて、裁判官に「どうして変えるんですか?」みたいなことを言われて、ポンと判子を押してもらうんですけどね。
一応、そういう事をやって区役所に行って改名。前は「みのる」っている名前だったんですが、「みのる✕(ばってん)德治郎」って書いてあった。戸籍には。ははは(笑)
父も同じような戸籍を持っているんですけどね、それはやっぱり結構重い感じがしましたね。
もちろん何から何まで変える…戸籍を変えるので、俗名というか通称を変えるならともかく、名前を変えるので、銀行口座、生命保険、ゴルフの会員券、クレジットカード、何から何まで変えるので、これは中々ねめんどくさいよ?

Q:

今のうちに「德治郎」っていう名前に作っておけば?

貴大:

ははは(笑)

德次郎:

まだですよ。「こいつがダメだと思ったら、金をやって仕事はさせるな」っていう家訓ががありまして。

貴大:

逆。金もくれない、仕事はさせる。

德次郎:

(笑)というのがあって、やっぱり当主にしちゃうと、金を使って信頼を潰しちゃう。だけど、お金を与えとけば、その範囲の中でしかやれないので。家を潰す事がないので、それは外に出せということが書いてあるので、まだ、德治郎にできるかどうか見極めている最中です。

貴大:

お金をください(笑)

ナレーション

続いて、山本貴人のターニングポイント。

貴大:

僕はまだ社長もなってないし、もちろん德治郎にもなってないので、山本海苔店に入る事を決めた…ターニングポイントっていうほどターニングポイントではないんですけど、やはり、すり込みというか、父親とか父方の祖父である5代目、6代目の德治郎からは、4代目にはお会いしたことは無いんですけれども「山本海苔に入れ」と言われた事はないんですけど、母方の方がですね、時代もあったんでしょうけど、「大変なとこの嫁に行ってしまった」っていうのが多分合ったとおもうんですけれども、そこの母方の祖父と祖母が、たとえば「サッカー選手になりたい」と言おうものなら、「何言ってくれちゃってんの?」みたいになって。「えー!」みたいな。
そういうすり込みがあって、徐々に全てのいろんな人生の選択は山本海苔店の社長、それこそ德治郎になるにはどれが一番いいのかな、っていうのはうっすら思いながら。決断してきた感じがします。

德次郎:

凄い覚えてて面白いのは、中学校の作文で、まず、「サッカーをずっとやってJリーガーになる」。「Jリーガーになって、日本代表になって、その後、JAPANの監督をやるから、海苔屋になるのは45歳ぐらいだ」と書いてあって、ははは(笑)あれはなかなか面白かった。

貴大:

ありがとうございます。

德次郎:

はは(笑)あとね、彼がうちに入ってきて言った事で、ものすごく印象に残ってるのは、うちに入ってきてしばらくしてからの話ですけど、「銀行って銀行の為に働いている人は誰もいない」「銀行を誰も愛してないし、自分のために働いてるのに、山本に入ってきてから、みんな会社が大好きで、会社の為に働いている」って。
「商品を大好きだし、会社も大好きだし、それはびっくりした」って言ってたよね?
あれはすごくね…今もその気持でやってくれてる?はははは(笑)

貴大:

だんだんヤバくなってきてる。僕がじゃなくて社員がその求心力みたいなものはどんどん落ちてる危機感はありますよ。

德次郎:

求心力が落ちたのは、お前のせいじゃないの?お前に対する。会社に対する求心力は別として。

貴大:

それはあると思います。

德次郎:

貴大に求心力を着けないとさ。

貴大:

それはもう…僕の…

德次郎:

さっきも言ったかもしれないけど、「德」で人を惹きつけ、引っ張っていくっていう。

貴大:

理想ですね。

德次郎:

そういう経営者になってもらいたいね。

貴大:

え?(笑)

德次郎:

へへへへへ(笑)でも私もやっぱり…似たような話ですけれども、小学校6年生の卒業文集に「将来なりたいものは?」ってよくあるじゃないですか。将来の夢とか。そこに「家業を継ぐ」って書こうと思ったんですけど、それはかっこ悪いなと思って、野球選手だか宇宙飛行士だか、なんかそういうのを書いた覚えがあるので、その時点では、うちを継ぐという意識は…私も父から言われた覚えはないですけども、子供心に父の背中を見たり、しょっちゅう会社に行ったりしてましたから。お店に。だからなんで行ったかわからないんだけど、食事をご馳走してもらったりよく会社には行って、父に食事ごちそうになったりしてましたから。学生時代とか。小さい頃から。そういうんでずーっと背中見て、なんとなく自然にこの…
ただ、就職の時に、直接店…山本海苔店に入ったんですけれども、その時ちょっと抵抗してですね、「他の会社で修行しないと、他人の飯を食わないと一人前じゃない!」といって、他の会社に就職したかったんですけれども察してもらえず「お前は即ウチに入れ」と言われて、他の今副社長をやってる2人はそれぞれ銀行とかで修行したんですけれども、私は直接「お前はその2人にサラリーマンとはどういうもんかきけばいい」言われ直接はいったんですけど、ある意味、本当の、下積みの工場をホウキで掃く掃除したりするところから、新入社員ですから、できましたから。そういう意味では下積みの苦労がというかそういうのが分かって、ものすごく結果的に良かった。良かったか良くなかったかよくわからないけど。自分では良かったかなーって。
でも逆に彼は修行させた方が良いのかなって思って、銀行に。どこに入ってもいいけど…。

貴大:

どこに入ってもいいし、何でもいいから自由にして良いよって言われて。

德次郎:

その代わり最大5年。

貴大:

うん。3年以上5年未満みたいな制約があって、外に行くならですよね。で、色んな選択肢の中から銀行を選んだっていうことですね。

ナレーション

德治郎と貴大。
立場が違う2人がそれぞれ社員と接する上で心がけていることとは。

德次郎:

「フレンドリーに。気さくに。気楽に」って。
よくワンダリングアラウンドってぐるぐる社内を回っちゃーその辺の空いている席に座って、「どう?」とかって。店なんかもぐるぐる回った時に「何かある?」とか。「困った事はある?」とか「元気でやってる?」とかそういう話はよく聞きますね。
さっきやっぱり社員は家族の一員だと思っているので、身体の事とか、いろんな事を気にしてあげているっていう気持ちが自分にもあるし、そういうふうな感じで接してますけどね。

貴大:

社長手紙書いてましたよね?誕生日に。

德次郎:

昔ね。

貴大:

やめちゃったんですか?

德次郎:

1回だけね。

貴大:

1回だけで終わっちゃったんですか?

德次郎:

全社員に直接手紙を書いて、誕生日会をいやってたんですが。300人400人いたかな。全社員一人ずつ直筆で手紙を書いて誕生日の記念品と一緒に渡していた事があって、それは中々大変だった。
今も神棚に置いてあるって言われた。はははは(笑)そういうのってものすごく大事なのかなと思いますけどね。

貴大:

正直、会社って仕事ってすごく人生の中でも時間が長いじゃないですか。意識しててもすぐボロがでるので、あんまり意識してないですね。結構自然体でやっちゃってますね。良くも悪くもなのか。
時代もあったんですけど、社長を羨ましいなって思うところは、社長はほぼ全社員から愛されている。で、「見たか」っていう感じなんですよんね。「みたか!」みたいな。

德次郎:

はははは(笑)そんなこと無い。

貴大:

ある社員からは、「社長は僕に何も強要した事がない」と。要するに、社長ってたしかに大きな…それは役割の問題もあるけど、大きな事を言って、「あれどうなった?」「これどうなった?」とか、いわゆるサラリーマン的な質問は一切しないですよ。大きく喋ってこういう方針で行こうとか、それこそ「皆元気か?」とか「家族は元気か?」とか。

德次郎:

はははは(笑)

貴大:

汚いと!それこそ社長がCEOだとしたら、COOなので、進捗の管理をしないといけない立場だから「あれどうなった?」「これどうなった?」と。「あれ行った?」みたいな役割の問題があるから、得で羨ましいと思いますね。

德次郎:

役割だからさ。今はそうだけど。

貴大:

良いってことですね?

德次郎:

今はそれでいいんじゃない?俺と一緒で「おうおう」ってやっててもしょうがないけど。

貴大:

(笑)そりゃまずい。

德次郎:

でもやっぱり、社員に好かれてないと。管理もいいんだけど、もちろん。

貴大:

管理じゃなくて応援してるんです。

德次郎:

好かれないとね。究極。

貴大:

それはそうですね。

德次郎:

叱るにしても、ただ叱るのと、優しさゆえに叱るのとあるわけだから。それが、感じられる叱り方たか…

貴大:

社長は叱った事がないので。でも僕も「叱る」って表現をしたら叱った事はないと思いますよ。

德次郎:

数回ぐらいあるけどね時々。だから聞くわけよ、怒鳴ったりすると。

貴大:

え?

德次郎:

見たことあるじゃん?

貴大:

誰をですか?

德次郎:

どっかの事務所で怒鳴ってて。「おうおうおう」とか言ってさ。言ってたことあったよ。

貴大:

怒鳴るって言ったって…まあまあまあ。

德次郎:

まあまあって(笑)役割だから、確かに。やっぱりやり方もあるし。ただトップになった時は、やっぱり慕われたり、「社長の為に頑張ろう」と思ってもらわないときっと。管理だけじゃダメや無いかな。今の役割はまだ修行の身だからね。

貴大:

社長はそんな時期は無かったでしょう?COO的な。

德次郎:

ない。はははは(笑)

貴大:

(笑)ずるいと思います!本当にずるいと思う。

德次郎:

本当は部下にそういうの2,3人つけて…嫌なこと言うやつ?をつけるのが良いんだろうね。自分はちょっと優しくしてて。

貴大:

だからそれの役割を今僕がやってるという。

德次郎:

お前がやっていいかっていうのは、ちょっとね。考えたほうが(良いかもね)。部下みたいなさ。参謀みたいな人を…

貴大:

その人からの愛が必要ですよね?

德次郎:

(参謀みたいな役)の人を引き受けてくれる人がいたらいいね。理想だけど。そういう人を作るのとか直言してくれる人?裸の王様にならないように。

貴大:

それはたくさんいるから大丈夫です。

德次郎:

直言してくれる人が必要だね。