Story ~長寿企業の知恵~ 「 創業の精神 」
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帝国インキ製造 株式会社
オープニング・創業の精神 ~家訓や理念誕生の経緯~

ナレーション

今回のゲストは「帝国インキ製造株式会社」、3代目 澤登 信成 (さわのぼり のぶなり)。

1895年、印刷用インキの製造販売会社として創業。新聞印刷用インキを主体として始まり、その後、伝票帳票類用の、カーボンインキ等ビジネスフォーム用インキの、トップメーカーとなる。

1972年、スクリーン印刷インキの製造販売に乗り出し、現在は家電、自動車メーター、携帯・スマートフォン等、工業製品用に開発製造された高精細・高機能インキが、世界各国で高い評価を得ている。

100年を超える歴史の中で、絶え間ない技術革新を繰り返し、環境に優しく、新しい機能を持ったスクリーンインキの開発にチャレンジし続けている。

今回は、そんな帝国インキ製造株式会社の3代目、澤登 信成 (さわのぼり のぶなり)の言葉から、創業時から培われ継承されている「長寿企業の知恵」、その裏に隠された物語に迫る…

石田:

本日のゲストは帝国インキ製造株式会社 代表取締役社長 澤登信成さんです。よろしくお願い致します。

澤登:

よろしくお願い致します。

朝岡:

帝国インキ製造ですね、インキを作る会社と捉えてよろしいでしょうか?事業の内容は。

澤登:

そうです。はい。インキを作っております。ただ、インキといってもスクリーン印刷用のインキでして、用途的には工業用部品がほとんどです。所謂、雑誌とかああいう紙媒体に使われることは今殆どないです。

朝岡:

紙とか雑誌じゃなくて、工業製品に何かこう印刷するという。そっちが主流になってるということですね。

石田:

澤登さんは今何代目でいらっしゃるんですか?

澤登:

澤登になって3代目になります。私の祖父から数えて3代目ということです。

朝岡:

その前は、また別のご家族がやってというか社長がいらっしゃって、今は、澤登家になって3代目という、今おいくつですか?

澤登:

私は41です。

朝岡:

おぉー、青年社長ですね!

澤登:

いや、青年じゃないと思う。

朝岡:

いやいやいや!

朝岡:

でも、この帝国インキ製造って、なんか時代を感じさせる御名前ですが、これ由来というのは何かあるんですか?

澤登:

確かなところはわからないんですけれども、きっと時代が所謂帝国主義というか、そういった帝国というものがあった時代なので、そこから名前を取ったんだというふうに思っています。

朝岡:

120年以上の歴史をお持ちでしょう?例えば、明治20年代ですね、大日本帝国っていう日本の名前がね、大日本帝国ていう名前だったから、色んな企業で帝国ってついた名前が多かったみたいですけれど、その時代からということですね。

石田:

こちらにご用意頂いたのは?

澤登:

こちらにあるのが、スクリーン印刷用のカラーガイドでして、デザイナーの方が、こういう色が欲しいっていう時に選んで頂いて、このチップを切って、当社の所謂色を作る人間に渡してもらえれば、彼らがこれと全く同じ色を作ります。

石田:

こちらに、色の種類ってこんなにたくさんあるんですか?

澤登:

そうですね。全ての色を常に我々持っているわけではなくて、1シリーズだいたい13色あります。で、それを混ぜ合わせでこの中の全ての色を出すことをやっています。

朝岡:

これ、所謂見本帳ですよね?色のね!

澤登:

そうですね。

朝岡:

で、こんなに種類があるんだ(笑)

石田:

あははは(笑)

澤登:

ただ、デザイナーの方も割と独特でして、こういったチップでありながらも、もっとあたたかさをとか冷たさをとか。

朝岡:

さらに!

澤登:

もっと汚してとか明るくしてっていうのがありますんで、この通りにってのはなかなかいかなくてですね、そのやり取りの面白さとかはありますね。

朝岡:

色っていうのは、本当に奥が深い世界ですね。

澤登:

そうですね。私も時々嫌になっちゃう。

朝岡:

あははははは(笑)

石田:

あははははは(笑)

石田:

色を見過ぎて!

朝岡:

それくらい凄いんですね!

石田:

そして、こちらにあるのは?

澤登:

まず、これがですね、一見すると石目調の印刷物なんですけれども、これ所謂、隠し印刷というもので、こうやって裏から光を当てると、こうやって文字が。

朝岡:

まぁ、当社の中のなんですけども。これ(隠し印刷)、何かっていうと、印刷証自体はお客様がやってるものなんですけど、当社がこれを作って貢献してるのがインキでして、より細かい繊細な印刷ができるっていうことで、よりリアルな石目調になるっていうことと、この透けにくいっていうこと、今光り当てないと完全に見えない。

朝岡:

見えない!

石田:

見えない!

澤登:

家電とかだと、スイッチを隠したいという傾向が今ありますので、必要な時にパーッて触ると裏から光が出てスイッチが見えてくるという、そういったアプリケーションを提案しているところです。

朝岡:

だから、あれですよ!印刷って聞くとね、僕らどうしても紙とか!そこに字を印刷したり、デザインを絵を印刷したりってイメージがとても強いんですが、今やっぱり工業製品!お家で使う色んな製品に色だとかデザインだとか文字をプリントする。これがものすごく広がってるってことですね。

澤登:

そうですね。ありがたいことに、色々使い道というか、お客様考えてくださるんで。

石田:

私達のとても身近なスマートフォンの枠なんかも。

澤登:

そうですね。この白と黒で一応基本のところで提案しております。まぁ、これのいいところは、ちょっと肉眼じゃわからないんですけど、この直線性、エッジの部分が極めて真っ直ぐに出るっていうことでして、お客様によっては、ものすごーく微細なところまで見てこだわるお客さんというのがいまして、そういうお客様のお眼鏡にもかなったということでですね、お使い頂いております。

朝岡:

こう直線を出すっていうのは、そんなに難しいんですか?

澤登:

スクリーン印刷の特徴として、こういう網の目からインキを抜きます。通します。するとどうしても網の目が残っちゃうんですよね。ですから、それが残るとこうギザギザっていう形になってしまうんで。

朝岡:

はぁー、そういうことか。ちょっと滲んだように見えるという形になりがちだと。

澤登:

そうなんです、酷いものになると明らかに肉眼でこう線が見えてくのとかってありますね。

朝岡:

それがほんと一直線になってるというね、見た目鮮やかだよね!きちっとね!

石田:

くっきりと!

澤登:

これは、当社の新製品で、より細かい線を綺麗にということで作ったものでして。

朝岡:

これ!あの!米粒の中にこんな字書きましたっていうそれくらい小さい字ですもんね!

石田:

虫眼鏡でこう見ないと見えないくらいの細かい字ですよね!

澤登:

それ、米粒にも印刷して印刷出来たんですけれども、乾燥して割れちゃったんで、今日は印刷物でお持ち致しました。

朝岡:

でも、くっきり英語も日本語もね!くっきり印刷されてますよ。

澤登:

通常の場合潰れてしまうんですけれども、そこまで綺麗に刷れるようになったんで。

朝岡:

すごい技術ですね!

澤登:

ありがとうございます。

石田:

こちらの他にも帝国さんのインキを用いた製品というのはどういったものがあるんですか?

澤登:

他にはですね、自動車のスピードメーター。これが大きなところですし、あと、家電製品。ようは炊飯器の蓋の部分にこうONとかOFFとかのスイッチがありますよね、あれも印刷で作られてまして、あそこに使われるのもです。

あと、ちょっとした伝統的な部分で言いますと、ビネスフォーム。伝票の裏にカーボンて未だに、黒いベッタリ塗られてる、ああいうものも当社、昔ながらのものを作ってたりしてます。

朝岡:

ああ、そうなんですか。じゃあ、昔ながらのインクを使うものと、家電製品・工業製品こんなところにも文字が!というものも全部やってらっしゃるという。

朝岡:

ほぉー

石田:

ほぉー

ナレーション

ここからは、各テーマを元に、帝国インキ製造株式会社 3代目、澤登 信成の言葉から、歴史と伝統の裏に隠された「物語」、帝国インキ製造株式会社が誇る、「長寿企業の知恵」に迫る。

最初のテーマは、「創業の精神」

帝国インキ製造株式会社の、創業から現在に至るまでの経緯。そして、先代たちから受け継がれている想いとは。

石田:

創業の精神ということで、まずは帝国インキさんの創業の経緯を教えて頂けますでしょうか?

澤登:

当社は、まぁ、我々澤登がやっているんですけど、帝国インキ自体は前からありまして、澤登家としての事業の始まりは、私の祖父、澤登チアキが学生時代に、立教大学の学生時代にお酒の卸売りか何かを始めた、それが昭和7年くらいだったと思うんですけど、それが事業の始まりです。

で、そのうち彼が色々やってる中で、帝国インキというものを受け継いだのが、昭和18年戦争中でして、当時は、新聞印刷用のインキというのを行っておりました。

その時は確か、港区の芝浜松の辺りでやっておりまして、で、それが我々の帝国インキとしての始まりとなっております。

石田:

家訓や理念はどのようなものでしょうか?

澤登:

家訓というものはあまりないんですけども、我々帝国インキ当社にとっては、「企業理念、信条、私達の誓い」というものが、所謂、最も大事にしている考え方です。

やっぱりそこは、色々言い出すと長いんですけど、それを大事にしていかなければならないというのがまず第一にありまして、そこからお客様を大事にすることによって、経営者とかっていうことではなくて、帝国にいる皆が豊かになって、豊かになることに向かって活動していこうじゃないかという。

その結果として、我々帝国インキという会社自体が大きくなっていけたらいいなという想いで、我々「企業理念、信条、私達の誓い」というものを誇っております。

朝岡:

ほー、それは具体的には、毎日とか毎週とかにいっぺんくらい社員に徹底する機会というか、そういうのは設けてらっしゃるんですか?

澤登:

部署毎に、我々の「企業理念、信条、私達の誓い」というものを浸透させるかっていうのは、まぁ、部署毎に行ってるんですけども、ただ、確かに唱和というものを行ってもいます。

それは、例えば営業ですと、毎週月曜日に唱和をしたりしてますし、ただ、その唱和するだけですと、文字面を覚えるだけになって、じゃあその中身は一体わかってんのかい?みたいな感じになってしまうんで、それだけではなくて、その日常の仕事の中でも、それ本当にお客様の為になってんの?とか。

あと、会議の中でも、その会議でやってきたことの振り返りをしたりする時に、それ本当にお客様の為になってんの?とかっていうことを確認し合って、で、じゃあ実際どうだったんだろうね?ということをまた話し合って次の行動に結びつけるようにしています。

朝岡:

口に出してこう唱和するだけじゃなくて、実践の場で色々考えながら、その理念とか大事なことを確認してるということがあるんですね。

澤登:

まぁ、暗記力で勝負しても仕方ないんで、お客様に対して、我々の企業理念はかくかくしかじかです。なんて言ったところで、あぁそうですか。で終わってしまうんで。

そのやっぱり当社に求めているものは、それをベースにしてお客様自信が求めているものをどれだけ提供してくれるかということですし、やっぱりそれをどれだけ実践していくかということが、我々にとって大事なことで、やっぱり行動するということですね。

朝岡:

やっぱり先程お話し伺ったけれども、色をね、見本帳だけで決めるんじゃなくて、こっからまたお客様とのコミュニケーションをはかってね、決めていくという過程が、正に、そのお客様を大事にしていく過程と重なると思うんですけど、実際に社員の皆さんに、こういう風にしなさいよとか、或いは、社員を育てていく時に心がけていらっしゃることってあるんですか?

澤登:

スキル。って色々ありますよね。例えば、経理の人間だったら、会計簿記の知識を持っているとか、データが早く打てるとか。

そういうのは、それよりも先に、「企業理念、信条、私達の誓い」っていうそれをまず理解してくれってところから始まります。

それがないと、どんなにスキルがあったとしてもお客様の為に使えないと思いますし、当社の目指してる方向には向かうことが出来ないと思いますので、まずは当社の信じている「企業理念、信条、私達の誓い」というものを理解する。そこからがスタートという風に思っています。

朝岡:

じゃあ、まずその心みたいなものをしっかり身につけてもらって、そっから技術的なものとか、もののやり方。これも身につけてってくれよと。こういう形で社員に接していらっしゃるということですね。

澤登:

ただ、面白くて、「企業理念、信条、私達の誓い」っていうのを理解しました。ものすごいベテランの方とか退職された方もいるんですけど、時たま、技術だったり知識がないんで、トンチンカンなことをやったりしちゃう場合があるんですね。

お客様のことを想ってる、だから何をしてもいいんだ、っていうことにはならなくて、やぱり正しい仕事をするには、正しい事をお客様に届けるには、技量とかそういった知識っていうのは必要なので、やっぱりそういうのも平行して、まぁ、後付けになるんですけど、教えていけたらなと思ってやっています。

朝岡:

バランスね!

澤登:

そうですね。

朝岡:

両方のね!あぁー

石田:

機械っていうのもとても進化してると思うんですけど、それでも、やはり職人さんの技術って大事なんですね。

澤登:

私は、絶対必要だと思います。

確かに、今、例えばこの色。色々ありますけれども、これを測定する色差計ってのがあるんですけれども、数値で色が出てくるんです。じゃあ、その数値に従って色をまた再構成すると、元の色と同じものが出てくるかっていうとそうじゃないんですね。

結局、人間の目ほど、色を正しく捉えてるものって現状ではないんですね。で、色を見て何かを感じるっていうのは、やっぱり人間じゃないと出来ないことだと思いますので、先程お話しした、色を冷たくとか温かくとか汚してとかっていうのは、それはものすごい件数のデータを取れば出来るのかもしれないですけど。

やっぱりそこには、人が入ることによって生まれるものっていうのが、私は絶対あると思いますので、人は、うん。なくしたくないですね。絶対必要だと思っておいてやっていきたいですね。

石田:

実は私も色が好きで、家で自分でペンキ塗ったりするんですけど、なかなかその調合って難しいんですけど、それこそクライアントさんが求める色に合わせるっていうのは、とても技術が必要なんじゃないですか?

澤登:

私も色のことはよくわからない。あの、わからないっていうのは、どの色とどの色を混ぜ合わせればどんな色になるかっていうのは、経験してる人間でもないとわからないですね。で、こないだ会議で話を聞いてて面白かったのは、黄色を入れると白くなるっていう話が出てきたんです。

それ何故かっていうと、黄色のインキの中に白い顔料が入ってるんで、それが作用して白くなってくっていうですね。ですから、やっぱりそこには経験であったり、そういった先輩達からの知識を蓄積していくっていうこと、これはまず必要だと思いますし、あと、お客様の求めているものをきっちり理解してそれに合わせたものを出していくっていうこと。

あとは、だいたい1回じゃ上手くいかないんですね、我々が思っている以上に深いものをお持ちですので、すると、ちょっと違うよね、例えばこれをもっと、何ていうんですかね、派手にしてくれって言うならまだいいんでしょうけど、冷たいのにしてくれとかそういう抽象的な部分を汲み取り、諦めずにトライして、何回も出していくっていうこと。

それでキャッチボールしていって、近い色にしていくっていうそういうことが、我々の中には要求されてますね。ですから、技術であったり知識だけではなくて、お客様とやり取りを真剣にしっかりやっていくっていう、そこが非常に我々にとっては基本的に重要なところだと思っています。

朝岡:

帝国インキさんてあれですよね、インクを作ったらおしまいっていうんじゃなくて、そこから始まっていくっていうのがあるんですね。そういうお話聞いてるとね。

澤登:

そうですね。やっぱり使って頂いて初めて当社の価値っていうのが出ますので。

だから例えば私が、会社の調子が悪くなって、現物支給しますって言ってインキをみんなに配ったところで、そんなの欲しくはないですよね。

お米とかだったら食べれますけど、インキは食べれないですから、ですからやっぱり使って頂くことによって、インキというもの、当社のやってるものの価値が出ますので、そこから先がまた大きな勝負っていうのはあります。はい。

朝岡:

営業の社員の方っていうのは、営業成績みたいなものでね、いくら売れたとかそういうことで自分がやったっていうのがわかるんですけど、今仰ってるその職人さん達は、スキルを持ってらっしゃる方は、なかなかそのやってることが、成果が上がってるのかそうじゃないのかわかりにくい部分もあると思うんですよ。

その辺に、こうモチベーション高める為に、何か社長が普段から言ってることとか心がけてることってのはあるんですか?

澤登:

先程もお話しした様に、我々の製品ってものはお客様にお使い頂いて初めて価値が出るものです。ですから、どんなに職人がいい仕事だと言ってぴったり色を合わしても、お客様が使ってもらわなければ意味がないっていうのがあります。

ですから、我々が感じる仕事の実感であったり楽しみ、特にその職人の人達、特にお客様と直接接する機会のない人たちは、まず、当社製品がこういうものに使われているんだよってうのを、できるだけわかるように伝えていきたいと思って、伝えるようにしています。

あとは、機会があれば、お客さんと直接接してもらって、お客さんがこういうことがしたいんだこういうものが欲しいんだっていうのを直にお客様とやり取りしてもらって、ていうこと。

あと、大事なのはクレームですよね。やっぱりクレームの時ほど当社のダメな部分とか我々がしっかりしなきゃいけない部分ていうのが見えてきますので、そういった色を作ってくれる製造部の人間もそうですし、研究所の人間もですよね、そういったクレームの時にお客様のところへ行って、お客様と真剣に向き合って、何がまずかったのかっていうのを聞くっていう事がが仕事。

まぁ、確かに嫌なんですけど、クレームっていうのは、だけどそれが次に繋がることですので、やっぱりそれをしっかりやるようには心がけています。