Story ~長寿企業の知恵~ 「 決断 」
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株式会社 今朝
決断 ~ターニングポイント~

ナレーション

「決断・ターニングポイント」。

これまでに今朝に訪れた苦境や、それらを乗り越えるべく
先代達が下した決断、その裏に隠された物語とは?

石田:

つづいては決断ということでまずは会社にとっての転機・ターニングポイントをお聞かせいただけますでしょうか。

藤森:

古くからやっておりますので、戦争が終わるころですかね、昭和20年の8月になってあの辺は、空襲には合ってないんですけどそろそろ危ないということで強制疎開ということで自分たちの手で建物を壊してしまったんですね。
戦争が終わってほんの数日間だけだったらしいんですけど、建物に戻っていったら、当時木造の建物だったんですけれども、お肉の冷蔵庫には扉だけが大きな扉と小い窓があってそこから通りに出たところに知らない人が住み込んでて、勝手に不法占拠されててそこを取り戻すのに大変苦労したということを聞いております。

朝岡:

そうですか。戦争の混乱で銀座のほうは焼けちゃってるし、下町は空襲で全部やられちゃってるし、そういう人たちがなかなか住むのに困って不法占拠の始まりだったのかもしれないけどご苦労多かったんですね。
それはどのくらいで解決なさったんですか。

藤森:

何年も裁判をして、やっと戻ったという風に聞いてます。

朝岡:

その他に何かご苦労があったことはありますか。

藤森:

2代目はかなりのアイディアマンでして、自分が芸者遊びするときにお茶屋さんに出前で今朝を取ったりとか、あるいは神社・仏閣に碑を立てて宣伝したりとか、とてもいろいろされたんですけど、最後は何でもOKOKで保証人になってしまって、借金して逃げられてしまって肩代わりするのに大変だったということを聞いております。

朝岡:

2代目(笑)

藤森:

2代目ですね(笑)

朝岡:

2代目ですか(笑)2代目も…やんちゃだったんですね。

藤森:

そうですね、きっと(笑)

朝岡:

新橋ですからね。粋な人とやんちゃな人は紙一重ですからね。それを乗り越えたと。

藤森:

はい。

朝岡:

なかなかしかし借金が増えていたりするとね、また埋めたりするのもこれ大変だったんじゃないですか。

藤森:

当時夏の7,8月は江の島にお店がありまして、全員そちらに移ってそちらで営業していたらしいんですけど、そこも清算して戻ってきたことで何とかなったという風に聞いてます。

朝岡:

(笑)すごいですね。

石田:

藤森さんにとってのターニングポイントを伺いたいんですけれども。

藤森:

学生が終わってドイツの鉄板焼き屋さんで働いてたんですけれども、背も低いですし童顔なもんですから、子供にみられて仕方がなくて。オーダーストップが11時で1時くらいまでやってましたから、「なんで子供が働いてるんだ」とか「東南アジアだから貧しくて売られてきたのか」とか「養子にしてやろう」とかそんなのはしょっちゅう言われたんで、髭を生やしてから、今はトレードマークになってしまいましたから、その時生やさなければまたちょっと違う人生歩んだんじゃないかと思いますけど(笑)

朝岡:

でも海外で鉄板焼きのアルバイトをなさっているというのは、それはいずれ今朝を任せるから武者修行してこいみたいなそういう感じだったんですか。それとも違う理由があったんですか。

藤森:

基本的にはそうなんですけれども、大学4年くらいになって親父が「お前どうすんの?」と聞いてきたときに、とりあえず家から出たかったので、できたら海外でっといったときに、せっかくだからフランス料理も見たいなと思ったんですけれどもフランスにはそういうツテがなく、アメリカがドイツだったらあるということで、ずっとクラシックが好きで大学でもトランペットを吹いてましたからドイツだったらばホームシックにもならずに行けるだろうと。

朝岡:

音楽もいっぱいあるしクラッシックも。

藤森:

それでドイツに行きましたですかね。

朝岡:

そうですか。

石田:

ドイツを経験されて、海外と日本とで飲食業界の在り方というのは全然違うのでしょうか。

藤森:

全然違いますね。日本ですとどうしてもこちらがサービスする側ですので下にみられますよね。でもヨーロッパですと、職業訓練学校を出た人のサービスでもあるので、ほんとに人として同等に扱ってもらってるという感じがありますね。

朝岡:

昔は特にそういう意識が強かったのかもしれませんね。「マイスター」とかいるわけですもんね。食べ物屋さんで100年を超える企業、しかも一族とかでずっと続く企業が日本にこんなにあるのって珍しくないですか。

藤森:

はい、そう思います。

朝岡:

ね。ドイツだと有名なビアホールだとかあるけど経営者が代々ずーっと一緒でっていうのはなかなかないと思いますけどね。

藤森:

少ないと思いますね。

朝岡:

やっぱり。その辺もドイツ時代に肌で感じて。

藤森:

そうですね。

朝岡:

社長になってから新たな苦労はありませんか。

藤森:

日々色々ありますけど、ビルがやはり古いですから、建て直すかそれか今のを耐震工事にするのかってことを役員、親父とか弟とかていう時に、建てなすんじゃなくて耐震工事を選ぼうという時に、私共のお店が2階にあるんですけれども、通りから入った所に以前は窓ガラスで、上からお客様が来るのを見えるようにしてあったんですけれども、やはりそこが弱いからということでそこが壁になったんですね。
で、その時に弟とかは安い壁紙でいいじゃない?って言う風に言ってたんですけれども、せっかく入ってくられた方にアイキャッチになるようなうちのオリジナルがほしいという事で、まぁ「きーやん」と呼ばれたますけど(笑)木村英輝さんにつてを頼ってなんとかたどり着いて壁画をお願いして描いていただきました。

朝岡:

それが今やお店のシンボルになっている壁画になるわけですね。

藤森:

そうですね。

朝岡:

そうか。じゃあ建て替えるか建て替えないか、建て替えないけどこういう壁紙にするかそうじゃないかっていうご苦労があったところで、いい方向に持っていけたと。

藤森:

そうですね。

朝岡:

今嬉しく髭がピクピクっとね。

石田:

朝岡:

お客さまと接する中で、色んなクレームがあったりするとそれが財産になると伺いましたけど、お客様から寄せられたご意見、まぁクレームでも良いんですけど、非常に印象に残っているものを上げていただくと、どういうものですかね。

藤森:

私個人に向けて一度言われたことがありまして、「あんまりいい格好するなよ」と。お客さまより質のの高いスーツを着てて、結局お客さまを引き立てる側の者がお客さまより目立っちゃいけないよ、ということは言われましたね。

朝岡:

あーそうですか。じゃあ今日のこの格好は、こうやって外にいらっしゃるときの格好というわけですか。

藤森:

そうです。

朝岡:

じゃあ普段お店にいらっしゃる時は。

藤森:

普段はもっと安いスーツです。

朝岡:

笑。お客さまを引き立てるという。

藤森:

はい。

石田:

蝶ネクタイはどうですか。

藤森:

蝶ネクタイのときもありますし、そうでないときもあります。色々です。

石田:

どんなのをされてもきっとおしゃれなんでしょうね。

朝岡:

心はピカイチだけど、外見はお客さまを。

石田:

引き立てるために。

朝岡:

そういう哲学みたいなものがあるんですね。

石田:

ですね。