Story ~長寿企業の知恵~ 「 創業の精神 」
次のパート→

株式会社 今朝
オープニング・創業の精神 ~家訓や理念誕生の経緯~

ナレーション

今回のゲストは「株式会社 今朝」、5代目代表「藤森朗」。

1880年(明治13年)に、すき焼専門店として創業した今朝は5代にわたり口溶(くちど)けの良い最高級黒毛和牛(さいこうきゅうくろげわぎゅう)の「松阪牛(まつさかうし)」を中心に板前が一枚一枚包丁で切り分け、今朝秘伝の割下(ひでんのわりした)に根深(ねぶか)の白い千寿葱(せんのひさしねぎ)、椎茸、焼豆腐など吟味したザク(野菜)や玉子を使用して、東京のすき焼の味を守り続けている・・・。

今回は、そんな今朝の5代目・藤森朗の言葉から日本が世界に誇る「すき焼き」への「想い」と「こだわり」創業から続く伝統を守っていく中で、当時の代表達が下した決断その裏にかくされた物語を紐解き、長寿企業の持つ「知恵」の真髄に迫る!

石田:

今回のゲストは株式会社今朝、代表取締役社長、藤森朗さんです。
宜しくお願い致します。

藤森:

よろしくお願いいたします。

朝岡:

ようこそ。最初にこの番組は会社の事業内容を聞くことになっているんですけど(笑)
今さら今朝さんに事業内容を聞くのも何でございますけど。すき焼き、お肉の内容に関してはプロフェッショナル、こういう事業内容でよろしいでしょうか?

藤森:

はい。あと私どもビルで営業してまして、上の階は事務所で不動産業もしております。

石田:

藤森さんは今何代目でいらっしゃるんですか?

藤森:

私で5代目です。

朝岡:

なんて言ったって見てくださいよ、この鹿鳴館かな?!という。

石田:

(笑)ほんとに。新島襄かな、と思ってしまいました。

朝岡:

新島襄なんて言うとちょっと渋いですけど(笑)

石田:

いやいやいや(笑)もうファンなんですけど。

朝岡:

やっぱり老舗企業の代表という形で普段からこういう…おしゃれがお好きなんでしょうか。

藤森:

そうですね、はい。髭を生やしてから、髭に合わせたちゃんとした格好をしようというのはしております。

朝岡:

髭もね、いろんな髭もありますけど、藤森さんの髭はね上のほうがカイゼル髭っぽいですよね。

藤森:

そうですね。

朝岡:

昔のドイツ皇帝のヴィルヘルム2世って人がいて、明治から大正にかけてこういう髭をする方が多かったのよ。政治家とか軍人さんで。

石田:

はい、そういえばそういった写真をよくお見掛けします。

朝岡:

かっこいいですよ。でも、この髭、気になるでしょ。いつごろからですか、この髭は。

藤森:

大学卒業してドイツで働いてましてその所で子供にみられるから髭を生やして、だからもう今年で29年目になります。

石田:

へー!当時からずっとそのスタイルを維持していらっしゃる。

朝岡:

童顔だったんですよ。

石田:

あぁ!(笑)

朝岡:

童顔だったんで、大人にみられるようにって生やされて、でも好きになっちゃってね29年。髭の社長ですよ。

石田:

ね、トレードマークですね。
今朝さんといえばすき焼きのお店で有名ですけれども、改めて他のお店と違った特徴やこだわりをお聞かせいただいてもよろしいでしょうか。

藤森:

私どものすき焼きは東京の昔ながらの牛鍋のスタイルを守っていますので、わりしたを使って。あと、私どもは松阪牛を中心に扱っていまして、その中でも長い間飼育した雌の牛だけを使いまして本当の脂身のおいしさをご提供するようにしております。

朝岡:

すき焼きだとお肉はもちろんですけど、その他にお豆腐があったりねお野菜があったりするじゃないですか。その辺はどうなんですか。

藤森:

お葱は千寿葱と申しまして、東京の千住に葱専門の市場がありますからそちらから仕入れていますし、お豆腐も新橋に昔からあるお豆腐屋さん、です。

朝岡:

切り方なんてどうなんですか。

藤森:

私どもは板前が一枚一枚切っておりますので。

朝岡:

板前さんが。

藤森:

はい。

朝岡:

一枚一枚包丁で。

藤森:

はい。

石田:

板前さんが切ることによってよくあるスライサーで切るものとはどのように変わってくるのでしょうか。

藤森:

スライサーですと、一度凍らせないといけないんですよね。板前がやるときは、なるべく0度に近い温度、味しいお肉というのは融点が低くて室温に置いておくだけですぐ溶けてしまいますから、なるべく低い温度で切るわけですけれども包丁ですと多少はギザギザとなりますのでそこにわりしたが染み込みやすくてそちらのほうがやっぱりおいしいですね。

朝岡:

なるほどね。食感にもね、味の絡まり方とかそういうのも切り方ひとつで変わったりするんですよ。あと、今朝さんくらいのお店になると、使っていらっしゃるお鍋にも独特の特徴というかこだわりがあると伺いましたけれども。

藤森:

私どものお鍋は昭和40年ぐらいですかね、親父の代にそれまでのものは一新しまして独自のものにしようと南部までおやじが行って、少し角度をつけて、直角だと端っこが取りづらくて焦げやすいので、少し角度をつけて取りやすくした鉄鍋を使っています。

朝岡:

南部鉄の。

藤森:

ええ。

朝岡:

はー。こういう話してるだけで食べたくなっちゃうね、今朝さんの所に行ってね。

石田:

はい。

朝岡:

社長自らが接客することなんてあるんですか。

藤森:

はい、しょっちゅうしてます。

石田:

えー!

朝岡:

働いていらっしゃるんですか!

藤森:

ええ。昼間忙しい時は洗い場とかにも入りますし、夜はお客様のところへ運んでそのまますき焼きを焚くこともございますよ。

石田:

ちなみにその時のスタイルはどういった…

藤森:

このまんまですよ(笑)変わらないです、このままです(笑)

石田:

そうなんですか。

朝岡:

今朝さんそのものが社長だから。歴史を感じてサービスをしてくれる、社長自ら。

石田:

やってくださるんですね。美味しいお肉をいただけるお部屋の中はどういた感じになっているのか気になるんですけれども。

藤森:

基本的にはこたつで、掘りごたつ式になってましてお楽に座っていただいて、ちゃんと床の間があって掛け軸がかかっていて、お花がいけてあって、お香は焚いてないんですけど日本の設えを伝えたいなと思っております。

石田:

ちなみに海外で日本のすき焼きのようなものはあるんですか。

藤森:

牛肉の場合ですと、塊で焼くが煮るかということしかないので、薄切りにするのはせいぜいカルパッチョぐらい。

朝岡:

生でね。

藤森:

ええ、生で。なのでそれをわざわざ鍋にかけて食べるってことはたぶんないと思いますね。

石田:

そういったお肉を設いの空間でいただけるっていうのは、きっと日本好きの海外の方々大喜びだと思うんですけどね。

藤森:

えぇ。企業様がご接待で取引先の海外の方をお連れになるっていうのは多いですので、そういう方はほかの店にもいらっしゃるんでしょうけど、掘りごたつ式で足が延ばせて座れて、目の前で調理されるっていう所にはとても喜んでいただけていると思いますね。

朝岡:

お肉にこだわっていらっしゃる、松阪のお肉という話ですけれども、いろいろどれがいいってずっと気を張っていないといけないんじゃないんですか。

藤森:

そうですね、基本的には問屋さんにお任せしておりますけれども。以前はA5(ランク)だったら何でもいいというのがあったんですけれども、ちゃんとした脂身はやはり脂身が月齢が長いお肉でないとだめなので、そういったものを中心に選んで場合によっては農家も指定することもございます。

ナレーション

ここからは、各テーマを元に、藤森朗の言葉から、長寿の知恵に迫る…。

最初のテーマは、「創業の精神」
今朝の創業から現在に至るまでの経緯、先代達から受け継がれてきた想いに迫る!

石田:

まずは創業の精神ということで、創業から現在に至るまでの歴史、経緯を伺えますか。

藤森:

初代は藤森今朝次郎と申しまして、上諏訪から遠い親戚でありました宮坂廣吉という方を頼って東京に出まして今廣というお店で下足番からはじめまして、当時の牛鍋を習いまして、明治13年1880年に独立をしたんですね。
でその後、今朝という名前で始めまして、大正時代になって2代目の時に株式会社になりまして、その時洋食のお店も始めたようなんですね。戦後の昭和39年に今のビルにいたしまして違うところでも行ったんですけど、また戻って営業してということでございます。

朝岡:

明治の初めに西洋の食文化が入ってきて、すき焼きも始まったわけですけれども完全に西洋のものではなくて日本の文化とうまーく溶け合って進んできたんですけれども、新橋でお店をやっていらっしゃって、若干の不動産の仕事もやっていらっしゃるということですけれども今の新橋の駅前のビルの営業っていうのはいつぐらいからだったんですか。

藤森:

昭和40年ぐらいからですかね。親父が新しくできたビルだからいいだろうということでそっちに移ったんですけれども結局回りが雑居ビルでしたので、小料理屋さんがカラオケをおきだして音が漏れてくるとか、雰囲気に合わないお店が増えたりとか、私どもの店だけしっかり衛生管理をしてもどうしても害虫が入ってきたりですとかそういうことがあったので今の場所に戻ったわけです。

朝岡:

藤森さんの代になったのはいつの時ですか?

藤森:

私が社長になったのは2007年です。

朝岡:

じゃあちょうど10年。

藤森:

そうですね。

朝岡:

藤森さんが社長になってから変えたこととか新たに取り組んだこととかはありますか。

藤森:

それまで洋食もちょっとやっていたものですから、2008年にすき焼き一本という形になりまして引き継いで、「はい、お前やれ」という感じだったので、知らないことが多くて伝統伝統言ってても結構知らなくて、床の間にかざる掛け軸も扱いを知らなかったのでちょっと勉強をしようかなっということも致しました。

朝岡:

もう一回そういうところも含めて勉強なさったという。

石田:

ところで今朝さんの、お名前の由来はどんなとこに。

藤森:

私どもの初代が「藤森今朝次郎」っていう名前であったのと、修業したところが「今廣」で、今廣さんは「今銀」というところの枝分かれで、暖簾分けということで「今」という字をもらいまして自分の名前の今朝次郎に合わせて「今朝」という名前になっております。

朝岡:

こういう老舗だとさぞや立派な家訓や理念が掛け軸になっていることを想像してしまいますがそんなことはあるんですか。

藤森:

いや、何にもないですよ(笑)特に家訓とかそういうのはないので。もう好きにやりなさいということでバトンタッチされましたね。

朝岡:

そうは言ったって、親が働いている姿を小さいころから見てそれがだんだん世代を超えて教えになっていく、みたいのはあるでしょうね。

藤森:

そうですね。

石田:

社員教育といいますか人材育成で力を入れていらっしゃる点はどういったところですか。

藤森:

お客様にとって一番いい状態でお肉を召し上がっていただくように、というところは一番に気を配っていますね。

朝岡:

その辺は日ごろから気が付いたときにアドバイスをするとか話をするとかやってらっしゃるってことですね。

藤森:

一番勉強になるのはクレームをいただいたときにそれをどういう風に生かしていこうか、とういうことは従業員と話し合いますね。