Story ~長寿企業の知恵~ 「 言魂 」
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株式会社 はし藤本店
言魂 ~心に刻む言葉と想い~

ナレーション

3つ目のテーマは…「言魂」心に刻む、言葉と想い。

強い想いがこめられた言葉は、人の人生を大きな影響を与える。
はし藤の4代目、上中康成が、先代や家族から受け取った言魂、そこに込められた想いとは?

石田:

続いては、言魂ということで、先代やおじいさま、おばあさまから言われた印象的な言葉、そこに隠された想いを伺いたいと思います

上中:

はい。まぁ、私はおじいちゃん子だったんで、よく祖父に連れられて、上野公園を散歩してたんですけど、手を引かれながら、「お前は日本一の箸屋になるんだから」と。もうなるんだ!と(笑)もうなりなさいじゃなくて、なるんだよって、お前は日本一の箸屋なんだよっていうのは、聞かされて育ったっていうのは印象深いですね。

朝岡:

そうですかー

上中:

もう決めてしまってましたからね!

朝岡:

でも、何かあのほら、哲学的な言葉をね、言われるっていう方も多いんですけど、こういう長寿企業の人達ね。「お前は日本一の箸屋になるんだよっ!」って何か下町の職人のおじいちゃんはその一言で孫を虜にしたみたいなね!空気作ってますね!おじいちゃまもね!

石田:

思春期とかで、こう反抗とかなかったですか?いや継がない!ってことは、なかったですか?

上中:

私はほとんどなかったですね。ただ、先代の父からは、「いや、お前好きなようにやって良いんだよ」ってなことは言われてたんですけどね。

朝岡:

ふーん。その「日本一の箸屋になるんだよ」っていう言葉以外に、何か心に遺っている言葉とか出来事ってありますか?

上中:

私は、本を読むのが非常に好きで、高校1年生の時に、相田みつをさんの文書に会って、すごいファンになってしまって。はい。相田みつをさんに出会ってから、相田みつをさんの支持してるって言うんですかね、道元。まぁ禅の教えなんですが、相田みつをさんは禅の教えを分かりやすく伝えてる方なんですが、その中で、道元さんの言葉の中で、『正法眼蔵』(しょうぼうげんぞう)っていう本を、道元さん有名な本を書かれてるんですけど、その冒頭の言葉の中で、「仏道を習うとは、自己を習う也」

朝岡:

仏道。仏の道を習うとは、自分のことを習うと。ほぅほぅ。

上中:

これがね、ずっと当時から頭の中に刻まれてるんですよね。言うなれば、自己管理ですよね。

朝岡:

あぁ、そっか。

上中:

はい。全部、仏道だけでなく、生活全てが自分の心次第なんですよ。で、自分を整えることが一番大事だということなんです。

朝岡:

あぁ、そっか。それを今、胸に刻んでいらっしゃるという。

上中:

ことあるごとに出てきます。何かショックだとか。でもそれを受けたけど、もしかしたら自分を成長させる糧かもしれないとか。それも整え方なんですよ。「うわ、もう俺ダメだ!」とか、動くのか、そういう気持ちに捉えるのも一つの心の在り方ですけど、そうじゃなくて、しんどいけどこれをバネにしてもっと上に行くんだって思うのも自分の心の中なんで、そこをどっちにふれるのか、前向きに捉えるのか悲観的に捉えるのかひとつで、その後の人生っていうのは変わってくるんだよっていう教えだなと解釈をしております。

朝岡:

なるほどなー

石田:

そういったこう印象的な言葉を、何か書き留めていらっしゃったりするんですか?

上中:

はい。中学の頃から、私文章を書くのが好きで、詩をずっと書いてたんですよ。今でもたまに散文みたいなものを書くんですけど、当時からノート、大学ノートのところに、自分が思ったこと、考えたこと、アイディアとかを一冊のノートに全部書き付けてます。今でもです。

石田:

随分分厚くなったんじゃないですか?

上中:

何冊も何冊もですね。何冊あるんだろう?っていうぐらいですね(笑)

朝岡:

自分の宝物ですね!へぇー!
そうやってこう色々自分の中でお考えになったり、或いは大事にしなきゃいけないってものがね、こう心の中にいくつかあったりすると、人間って、自分の力だけじゃどうにもならないことがあるんだなって思ったりして、そう何て言うんですか、俗に言う験担ぎだとかそういうことをされる方も多いですけど、上中さんもそうなんですか?

上中:

えぇ。やはり頭の中を1回クリアにしたいっていう時は、ドライブをして、秘密の場所っていうのをいくつか持ってまして(笑)

石田:

秘密の場所、聞きたくなりますけどね。

上中:

特に、森。私も木に関する商売をしてる者なんで、非常に落ち着くんですよ、森の中にいると。なので、季節が変わる毎くらいには、福島ですとか、群馬ですとか、あのいわば秘密の場所(笑)に行って、あの、静かな森の中でぽつんと座って、頭の中を整理するっていう時間を大切にしています。